第2巻第3号(通算12号) 東京都小笠原水産センター
2000年6月30日発行

アカハタ放流効果調査

放流されたアカハタのその後

海洋島第4号でアカハタ放流についての記事を紹介しましたが、今回はその後の放流と追跡調査についてお知らせします。
 平成11年3月、6月の嫁島への標識放流(詳しくは 海洋島第4号参照)に続き、平成11年11月10日に父島宮の浜(水深5mから7m)へアカハタ536尾(平均全長15.7cm、平均体重66.5g)を標識放流しました。放流されたアカハタは海面から海底に向かって一目散に泳ぎ、サンゴや石の隙間などに隠れるのが 確認されました。また、放流魚を捕食するような大型ハタ類や回遊魚などは確認されませんでした。放流から10日後と1ヶ月後には潜水調査を行いました。10日後の潜水調査では放流魚は放流地点を中心に数多く確認されました。また、標識の有無だけではなく、体色が黒っぽいことで天然魚との区別が可能でした。1ヶ月後の調査では放流地点周辺への分散がみられ、潜水調査中確認されたアカハタの数は天然魚29尾(小型魚から大型魚まで全て含む)、放流魚70尾でした。平成12年2から5月には釣獲調査を行いました。3回の釣獲調査で放流魚32尾、天然魚86尾を採集し、放流魚の回収率(釣獲された放流魚数/総放流魚数)は約6%とハタ類の放流効果結果としては非常に高い数字となりました。採集された放流魚の平均全長は16.9cm(最小13.4cm、最大20.5cm)で、放流時よりも1cmほど大きくなっていました。ちなみに天然魚の平均全長は21.8cm(最小13cm、最大 35.5cm)でした。
 釣獲したアカハタのうち放流魚は標本として取り上げ、胃内容物等の調査を行いました。人工餌料で育てられた放流魚も徐々に環境に適応し、エビ、カニ類や小魚を食べていました。放流魚の体色は天然魚に比べるとやや黒っぽく見えますが、天然の餌を食べて少しずつアカハタ本来の色に近づいているようです。
 今後も引き続き放流魚の生残率や成長を調査していきます。結果は本誌で随時報告していきたいと思います。


写真1 父島宮の浜での釣獲調査

写真1 父島宮の浜での釣獲調査

写真2 釣獲された天然魚(左)と放流魚(右)

写真2 釣獲された天然魚(左)と放流魚(右)