「君の名は」、小笠原のイセエビ属

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  以前通巻53号で「小笠原初の珍しいエビ」、その時は、まだ標準和名がなく、カノコイセエビの亜種として、シロヌケ型カノコイセエビ(Panulirus femoristriga)として紹介をしました。2008年に、名前が決まりましたのでお知らせします。
 国内では、鹿児島県奄美大島で漁獲されていることが分かり、三重大学の関口先生により「アマミイセエビ」と命名されました(日本動物分類学会誌タクサ2008 No.25)。同時に、シラヒゲ型は同誌の中で、従来の「カノコイセエビ」という名前を踏襲するとのことです。

図1 新和名「アマミイセエビ」:特徴は触角が白い。

図1 新和名「アマミイセエビ」:特徴は第1触角が白い。

 

図2 シラヒゲ型は晴れて「カノコイセエビ」に特徴は、触角に白の模様。

図2 シラヒゲ型は晴れて「カノコイセエビ」に特徴は、第1触角に白の模様。

 2008年のエビ漁期中、残念ながら「アマミイセエビ」は、水揚げされませんでした。「カノコイセエビ」は測定した701尾中に5尾確認されました。小笠原で漁獲されているイセエビ属で、もっとも多いのは、ご存知「アカイセエビ」です。その次は通称「青エビ」と呼ばれている「シマイセエビ」(P.penicillatus)。その他に、カノコイセエビ、稀にアマミイセエビが混じるということになります。

図3 プエルルス幼生。通称「ガラスエビ」

図3 プエルルス幼生。通称「ガラスエビ」、孵化から約1年

興洋により、9月末の夜間、南島沖で採取されました。

 上の写真は、イセエビ属のプエルルス幼生です。興洋によるLCネット調査時に採取されました。フィロゾーマ幼生から変態したこの頃は、消化管が一時的に退化し絶食しながら、岩礁にたどり着くために、沖を泳いでいます。その後、岩礁にたどりつくと1週間前後で脱皮し親と同じ形の稚エビになり歩行生活に入ります。しかし、小笠原で生まれたアカイセエビが1年後にどのような経路をたどって島に帰ってくるのかはまだ分かっていません。
 近年、イセエビの幼生期の飼育が可能になりましが、量産化には、まだ問題が残っているそうです。日本でのイセエビ研究は100年以上の歴史がありますが、まだまだ、未解明な部分は多く、今後の研究を待たれています。

図4 簡単!雌雄の見分け方

図4 アカイセエビの雌雄の見分け方