小笠原で60年ぶりにメカジキ稚魚を採集

 水産センターでは、昨年から( 株)日本海洋生物研究所と共同で、小笠原諸島で最も重要な水産資源であるメカジキの産卵生態を調査するため、調査指導船「興洋」においてプランクトンネット(マルチネット) を曳きメカジキの卵稚仔の採集を試みていました。メカジキの卵は、直径1.6mmと小さく浮性卵で海の表面を漂います。3日程度で仔魚にふ化し、ふ化直後の大きさは5mmにも達しません。メカジキの産卵場所は、南鳥島や沖縄を含む熱帯亜熱帯の広い海域で、産卵時期は、1年中産卵するものの小笠原諸島を含む北西太平洋では3月~7月が盛期と言われています。そこで、センターでは産卵盛期の5月~7月にかけて集中的に海面の表層をマルチネットで曳いた結果、6月に父島西沖で約2cmのメカジキ稚魚の採集に成功しました。

     マルチネット  採集風景

      写真1 マルチネット              写真2 採集風景

小笠原諸島におけるメカジキ漁獲量が春季~夏期にかけて増加すること、この時期に漁獲位置が父島の西沖に集中する傾向があり、その海域から稚魚が採集されたことから、メカジキは小笠原周辺に産卵をするために回遊して来ることが推測されます。

メカジキおよびマカジキ科の稚仔魚の採集位置

図1 メカジキおよびマカジキ科の稚仔魚の採集位置
(赤丸は、メカジキ青丸は、マカジキ科)

採集できたメカジキ稚魚の写真

写真3 採集できたメカジキ稚魚の写真

ふ化直後は、4mm程度でふ化後5日で5mm、1~2ヶ月後には17cm程度にまで生長すると言われています。この個体は、ふ化後1ヶ月以内の稚魚と思われます。

今後は、さらにメカジキの卵稚仔が集中的に分布する場所を探し、メカジキの卵稚仔にとって重要な海域を特定していきます。

マカジキ科の稚魚も続々

カジキの仲間にはメカジキ科とマカジキ科の2つがあります。小笠原諸島周辺海域を含む日本近海には、マカジキ科のマカジキ、フウライカジキ、クロカジキ、シロカジキ、バショウカジキの5種類が生息しています。メカジキの卵稚仔調査の時に、他の様々な種類の卵稚仔が一緒に採集されますが、その中にマカジキ科の仔魚がこれまで3個体採集されました。マカジキ科の仔魚は、体の形がとてもよく似ているのでその分類は難しく、現在種類の同定を進めていますが、種の特定には至っていません。しかし、小笠原諸島周辺海域はメカジキだけではなく、他のカジキの仲間にとっても重要な海域であると言えるかもしれません。

マカジキ科の仔魚

マカジキ科の仔魚

    写真4、5 マカジキ科の仔魚の写真

    一マスは1mm×1mmを表す。