第3巻第6号(通算25号) 東京都小笠原水産センター
2001年9月10日発行

小笠原近海でアカザエビ類の生息を確認

 本年7月、小笠原水産センター調査指導船「興洋」による深海新資源開発調査で、母島東方沖水深540mの海底からカゴ漁具(図2)によってア力ザエビ類が採集されました(図1)。アカザエビ類は、見栄えのする姿形と美味で値段も良いことから重要な水産資源生物となっています。本邦にはアカザエビ、サガミアカザエビおよびミナミア力ザエビの3種が分布することが知られています。今回採集されたエビは、形態特徴から、いまのところサガミアカザエビMetanephrops sagamiensisと思われます。
 小笠原で深海サンゴ漁が行われていた時代を知る島の古老の話や海洋科学技術センターの深海調査船「しんかい2000」の映像などから、小笠原の深海にアカザエビ類が生息する可能性は高いであろうと考えられてきましたが、これまで小笠原諸島沿岸海域からの採集記録はありませんでした。おそらく今回が標本の確保できた初めての記録となりそうです。
 サガミアカザエビは、東京湾口以南、主として四国土佐湾、九州沿海および沖縄舟状海盆の水深300mから400mの海底に分布しており、九州や土佐湾漁場では、アカザエビよりも多く漁獲されているようです。また、日本近隣では台湾でも漁獲されています。
 小笠原諸島周辺海域におけるアカザエビ類の生態や資源量に関する情報の収集は今後の課題ですが、将来有望な新資源候補が更にひとつ加わった意義は大きいと思います。小笠原水産センターでは引き続き、魚類や甲殻類を対象とした深海新資源開発調査を実施していく予定です。


図1 母島東沖で採集されたサガミアカザエビ
図1 母島東沖で採集されたサガミアカザエビ
頭胸甲長5.4cm、体重103g

 

図2 調査で使用したカゴ漁具
図2 調査で使用したカゴ漁具