第3巻第2号(通算21号) 東京都小笠原水産センター
2001年6月30日発行

アカハタモドキ産卵する!

 アカハタの種苗生産の成功については先の海洋島(通巻4号)でご紹介しましたが、水産センターではこの技術を大型のハタ類にも応用できればと考えています。現在、次期種苗生産候補魚種としてアカハタモドキ、シモフリハタ、ツチホゼリなどを飼育していますが、今回アカハタモドキが水槽内で産卵を行いました。
 アカハタモドキは「アカハタのまがい物」のような名前が付けられていますが、アカハタよりも大型になり、非常に美味で利用価値の高い魚です。しかし、アカハタよりもやや深い水深に生息しているため、釣り上げるとほとんどが死んでしまい、親を確保するのに苦労しています。
 現在やっとの思いで採集した貴重な12尾が、当センターで飼育されています。水槽飼育から1年半が経過した今年5月、お腹が大きな個体が現れ、産卵行動のような動きを見せ始めました。採卵用のネットを入れたところ5月8日に初めて産卵が確認され、5月29日までの22日間連日産卵が続きました。しかし、卵質が悪いせいか正常に発生を行う卵は少なく、ふ化までに至ったのは僅かでした。ふ化後の飼育では2週間で約4mmにまで成長しましたが、収容したほとんどの個体が死亡したため、その時点で試験を中止しました。
 今後は親魚の採集と正常な卵の割合の向上、ふ化後の飼育の改善に取り組んでいく予定です。


アカハタ(上)とアカハタモドキ(下)

アカハタ(上)とアカハタモドキ(下)

アカハタモドキ仔魚(ふ化後2週間)

アカハタモドキ仔魚(ふ化後2週間)


ヤシガニつかまる

 ヤシガニは沖縄諸島などではそれほど珍しくもありませんが、ここ小笠原では「幻のヤシガニ」といわれるくらい発見数は少なく、稀少な存在です。そのヤシガニが6月3日父島の南崎(島の南端)で発見されました。


発見されたヤシガニ

発見されたヤシガニ


 ヤシガニはヤドカリ類中最大種の陸生のヤドカリです。今回捕獲されたヤシガニの体重は1,432g、ハサミも強大で「挟まれると大変だ」と感じながらの測定でした。また他のヤドカリ類のように貝殻を背負わず、腹部が堅い甲に覆われています。普段は陸上で生活をしているのですが、産卵は海岸で行われ、ふ化後しばらく海を漂い、再び陸上へ戻る生活史を持っていると考えられています。小笠原のヤシガニの詳しい生態は謎ですが、おそらく海を漂っている間に流れ着き、この地で大きくなるものと推測されます。
 今後もヤシガニなど貴重な生物を発見・採集された方は、その生態を解明する上での重要な情報となりますので当センターまでご一報くだされば幸いです。