第2巻第10号(通算19号) 東京都小笠原水産センター
2001年2月27日発行

パヤオ導入試験

父島から母島間海域に浮魚礁を設置

 近年の小笠原諸島地域の漁船漁業は、漁業種類の多様化・分散化を進め、特定水産資源の乱獲を防止するために、返還後の小笠原沿岸では利用度の低かったマグロ類等の回遊性魚類の有効利用を進めています。
 2001年2月23日、東京都小笠原水産センターでは、マグロ類等の回遊性魚類の効率的操業を行うための副漁具、あるいはその滞留装置として導入が期待されている浮魚礁を、小笠原諸島父島から母島間水域(N26°53.95 E142°17.58およびN26°52.88E 142°17.01)に試験的に2基を設置しました(図1、図2)。
 設置した2基の浮魚礁は表層型浮魚礁(通称パヤオ)といわれるもので、廃材等を加工して水産センターで作製したものです。沖縄県などではパヤオ漁業といわれる漁業形態が定着するほど大きな成果をあげています。水産センター製のパヤオ試験礁としては、1997年2月に小笠原諸島父島の東方沖水深約1,000mの地点(N27°08、E142°28)に設置したものに続く第2段となります。前回のパヤオ試験礁は残念ながら設置後短期間のうちに流失してしまいましたが、釣獲調査と潜水調査により、カツオ・キハダ・シイラ・ツムブリ・ム□アジ類等の回遊性魚類が集まっているのが確認されました。今回のパヤオでも回遊性魚類に同様の効果が期待されます。試験結果が良好であれば、将来的には小笠原諸島での浮魚礁設置の事業化へ向けて一歩前進することになります。
 今後は、水産センター調査船「興洋」によるパヤオ試験礁の効果調査と並行して、小笠原諸島の厳しい気象条件を考慮したうえでのパヤオの維持管理や点検方法についても検討していく予定です。パヤオ導入試験について、関係各位のご理解とご協力をお願いします。また、周辺海域での漁獲情報やご意見・ご助言などありましたら、ぜひ、水産センターまでお奇せください。


図1 パヤオ設置海域(赤丸印)

図1 パヤオ設置海域(赤丸印)


図2 小笠原水産センター製パヤオ設置の様子

図2 小笠原水産センター製パヤオ設置の様子