第2巻第4号(通算13号) 東京都小笠原水産センター
2000年7月7日発行

七島・硫黄島海嶺 深海域魚類資源調査調査船「みやこ」

ぷりぷりのキンメダイを漁獲

 小笠原の深場の魚類資源といえば、オナガ(ハマダイ)を筆頭に数種類の高級魚があげられます。しかし、伊豆諸島や静岡県、千葉県などで大量に漁獲されているキンメダイは小笠原諸島ではほとんど水揚げされていません。少数漁獲されるものは小型でやせている個体が多く、他のキンメダイ科の近縁種と混獲されるため、それらがまとめて小笠原のキンメダイとして扱われてしまい、これまで市場ではあまりよい値がつきませんでした。
 小笠原水産センター調査船「興洋」が修繕工事期間中の2000年6月下旬に、東京都水産試験場大島分場調査船「みやこ」により、父島・母島列島の西方に南北に連なる七島・硫黄島海嶺の火曜海山周辺で深海魚類資源調査が行われました。調査時の水深帯は600mから800mが中心でした。この調査で、ナンヨウキンメ等の混獲なしにキンメダイ75尾(平均体重1,089g、平均尾叉長35.5cm)が採集されました(図1、図2)。これらのキンメダイの中には、体重2kg近い大型の個体も含まれ、肉付き、体色ともに非常によく、伊豆諸島周辺で漁獲されているものと比較しても遜色のないものでした。1995年6月に、調査船「興洋」が母島南東沖で調査したときに漁獲されたキンメダイ673尾の平均体重は834gですから、今回の調査海域のキンメダイは平均的に大型であったといえます。1995年の調査のときは小型から大型の個体まで同漁場で同時に釣獲されましたが、今回は比較的大きさが揃っていました。
 現在、採集個体のうち30尾については、解剖し生殖腺(精巣・卵巣)や耳石(※1)などを調べています。この結果、性比(オス/メス)は3.29とオスが多く、メスの GSI(※2)は0.67から4.31でした。伊豆諸島周辺のキンメダイは夏期の7月頃が産卵期のようですが、小笠原諸島周辺のキンメダイの繁殖生態については、これまでまったく知見がありませんでした。今回採集されたキンメダイの卵巣内の卵を光学実体顕微鏡で観察してみると(図3)、完熟までにはもう少しのようでしたので、伊豆諸島と同様に7月以降の夏期が産卵期のようです。
 採取した耳石の分析はこれから実施されますが、東京都水産試験場ではキンメダイの耳石による年齢推定の技術をすでに確立していますので、小笠原のキンメダイの年齢と成長に関する情報が近々得られるものと期待されます。
 まだ始まったばかりですが、ほとんど未知であった小笠原のキンメダイについての情報が少しずつ蓄積されてきています。今後の展開にご注目ください。


図1

図1


図2

図2

図3

図3