第2巻第9号(通算18号) 東京都小笠原水産センター
2001年1月19日発行

21世紀の漁業を考える-1

捨てられる資源の有効活用

 嵐の中のカウントダウン、そして新年!皆さんはどのような気持ちで新世紀を迎えられたことでしょうか?
 小笠原諸島が日本に復帰してはや30余年。この島の漁業は先達のたゆまない努力のもと、漁業基盤も順調に整備され、養殖漁業の展開、マグロたて縄漁業の定着、そして若い担い手の参入等、他では見られない勢いが感じられます。20世紀は小笠原漁業の自立をス□一ガンに試行錯誤を繰り返してきましたが、21世紀は発展そして飛躍の世紀になるよう、漁業者により密着した調査研究に取り組んで行きたいと考えております。そこで、新しい世紀の初頭にあたって、水産センターが今後取り組んでいく重点課題について、話題提供をするとともに、関係者の方々の忌憚のないご意見を伺えれば幸いです。
 以前、沖縄県と共同で種苗生産の研究をしていた頃、幾度となく那覇にある公設市場を訪れたことがあります。ここでは、珊瑚礁に生息する色とりどりの魚たちがショウケースにされいに並べられ(写真1)、「自然の恵みを一つたりとも無駄にしない」食材に対する沖縄人のこだわりを痛感しました。小笠原でも戦前あるいは返還当初は、ササヨ(ミナミイスズミ)を代表とする磯魚が食べられていましたが、安くて採算割れのする魚、磯臭く不味いイメージのある魚の多くが捨てられてきました。調査船「興洋」がトビウオ調査をはじめた頃(父島の料理店と保健所の協力を得て、料理教室を開催した際のアシケート調査では、「島で獲れる魚をもっと食べたい。どのようにすれば手に入れられるのか」という多くの意見が寄せられました。漁業は消費者があってはじめて成り立つ産業です。今年は何とか捨てられる魚を有効に活用するために、漁業者、民宿、飲食店そして台所を預かるお母さん達と連携を取りながら、いつでも島の魚が入手出来るような体制作りに取り組んでいきたいと考えています。


写真1 沖縄牧志公設市場の色とりどりの水産物
写真1 沖縄牧志公設市場の色とりどりの水産物


「海洋島」沖縄の雑誌に掲載中

「海洋島」は、沖縄の海・魚・自立経済などについて情報発信しているユニークな雑誌「いゆまち」(沖縄地域ネットワーク社 098‐874‐5040)に転載していただいています。小笠原と沖縄は同じ亜熱帯に位置し、共通する水産生物も多くいます。また、地域がかかえる問題にも共通点があり参考になります。情報化の時代に多様なネットワークを広げたいと思います。