第2巻第7号(通算16号) 東京都小笠原水産センター
2000年10月20日発行

JICA 研修団小笠原来島

新時代の太平洋の水産の架け橋

 JICA(国際協力事業団)の研修「熱帯沿岸資源管理コース」が去る10月5日から8日に、南太平洋の6カ国(キリバス、ミクロネシア連邦、トンガ、ナウル、バヌアツ、パラオ)、9名の研修員の参加で、小笠原諸島父島において開催されました。このプログラムは、太平洋の島しょ国において、沿岸の資源と環境に悪影響を与えることなく、漁業、養殖業、観光業等を総合的かつ持続的に発展させる戦略の構築と実施を担えるような人材を育成するため、日本国の援助で昨年より行われているものです。
 今回は小笠原がはじめて研修地のひとつに選ばれました。小笠原での4日間の研修では、漁船漁業、養殖、種苗生産、水産資源の維持・管理などの水産諸分野のほか、海中公園、ホエール&ドルフィンウオッチング、サンゴ礁の保全、ダイビング、エコツーリズムなど沿岸資源の利用に関係する講分野や歴史・文化などについて、小笠原での事例を具体例とした熱心で活発な研修が行われました。ドルフィンウオッチングや漁船漁業の研修では、講義のほかに、ウオッチング船やたて縄漁業の漁船に乗船して実習が行われました。幸いにも海況は良好で、期待どおりにイルカの遊泳やカジキ・マグロ類の漁獲の実際を見ることができました。


写真1 JICA研修団一行と小笠原村民のみなさん

写真1 JICA研修団一行と小笠原村民のみなさん


写真2 小笠原水産センターで魚類の養成と種苗生産のついて詳しい説明を受ける

写真2 小笠原水産センターで
魚類の養成と種苗生産の
ついて詳しい説明を受ける

写真3 調査船スタッフに熱心に質問する研修員のみなさん

写真3 講義の後、たて縄漁具を手に取り、
調査船スタッフに熱心に質問する
研修員のみなさん


  今回の小笠原での研修は、受け入れ側の不慣れはありましたが、天気にも恵まれ、研修コースの田中秀幸コースリーダーをはじめ、同行されたJICAの大崎光洋、フランク・ショパンの両氏、およびJICE(日本国際協カセンター)の矢木野功次氏の情熱のこもった綿密な準備もあって、はじめての開催にも関わらず成功裏に終えることができました。
 小笠原村にとっても、この研修コースの受け入れは、日頃、北の方ばかりに向けられていた視線を南にも向けるよいきっかけとなりました。小笠原は日本の南の端かもしれませんが、太平洋の熱帯・亜熱帯地方から見れば北縁にあります。小笠原諸島が南太平洋の島しょ諸国と日本をつなぐ要の位置にあることを再認識できたと恩います。今後も公・民問わず多様な交流が続くことは、南太平洋の島しょ国ばかりでなく、日本の、そして小笠原の将来にとっても、きっとプラスにはたらくにちがいありません。
 研修員の一行は、このあと、東京と沖縄で研修を受け、11月3日に帰国の予定です。各国へ帰国後、今回の研修の成果が活かされることを願っています。