利用広がるパヤオ
パヤオへの蝟集効果は

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 4月9日~15日の間、小笠原水産センターでは、漁業調査指導船「興洋」により沖ノ鳥島で調査を実施しました。

沖ノ鳥島

調査内容は、①魚礁調査、②底釣調査、③礁内調査です。①の魚礁調査では、都が平成19年に設置したパヤオ(中層浮魚礁)3基(北東沖、東沖、西沖)の周辺で漁獲調査を行いました。

 設置されるパヤオ

 カツオの平均尾叉長は45cm、体重1.8kgでした。この時、カツオ17尾、メバチ13尾、キハダ1尾の計31尾に標識(黄色のダート型タグ)を付けて、放流しました。

標識装着

 その後、静岡県水産技術研究所と三重県水産研究所から相次いで、カツオ標識魚再捕の報告が寄せられました。これまでに再捕されたのは3尾です。1尾は、静岡県御前崎港に水揚げされた中に発見されました。水揚げしたのは、三重県の竿釣船で、沖ノ鳥島の西沖パヤオ付近で操業した時のものだということです。また、残り2尾は、三重県和具漁港に水揚げした三重県の竿釣船で、1.8kgと1.3kgの2尾でした。やはり、沖ノ鳥島の西沖で漁獲したとのことでした。沖ノ鳥島ではパヤオ設置以前より、島の周辺にはカツオを確認していましたが、沖合での漁獲は、ありませんでした。またパヤオ設置後は、それまで、ほとんど見られなかった海鳥が数多く目撃されるようになりました。これも餌となる小魚がパヤオ設置により、蝟集されたためだと思われます。

海鳥

 多くのカツオがこの魚礁に付いていることが分かり、今回、初めて、島の沖合3カ所に設置されたパヤオで、標識放流をおこないました。報告を受けた再捕位置から、放流後も遠くには移動していなかったことがわかりました。また、現在では、数多くのカツオ竿釣船がこの沖ノ鳥島のパヤオ周辺で操業し、パヤオを利用している実態も明らかになりました。

カツオ竿釣り船

 島しょ農林水産総合センター八丈事業所が行った聞き取りから、千葉県の勝浦漁港に沖ノ鳥島産のカツオが数多く水揚げされていることがわかり、多くの漁船が利用しているものと思われます。パヤオでは、その他に、興洋に搭載されている、マルチビームソナーを使用した音響調査も実施しています。

 マルチビームソナーのエコー

 上図は、沖ノ鳥島西沖のパヤオを調査した時のものです。得られたエコーを南から見て表示しています。表示範囲は、縦は200m、横は東から西へ約560mです。中央やや上の、赤い部分が魚礁のフロート(上図、緑色のウキの集合体)部分で、水面下34mにあることが確認されました。その周辺に映る緑色の線状の部分が、魚群になります。フロートの周辺部に数多く集まっている様子が捉えられています。近年、日本沿岸では、カツオが不漁と聞いています。沖ノ鳥島でのカツオ漁は、今後さらに重要性を増すと思われます。

②底釣調査は11、12日に実施しました。結果、ナンヨウキンメ18尾(平均体重1.4kg)、キララギンメ15尾(平均体重1.2kg)、バケアカムツ2尾(平均体重5.2kg)などが漁獲されました。そのうち、ナンヨウキンメ雌の生殖腺熟度指数(KG値)は、平均4.0、最大7.6と高い値であったことから、この時期が産卵期ではないかと思われます。今後も調査を継続していきます。 

キンメダイ