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サンゴ白化から10年

 小笠原の島々の周りでは造礁サンゴが発達し、そこに棲む多くの魚やエビといった生き物とともに美しい景観を形成しています。しかし、2003年9月、母島でこのサンゴ礁が大規模に白化しているのが確認されました(写真1)。小笠原水産センターでは、被害の大きかった御幸浜を中心に、その後の回復状況を確認するため、毎年調査を行ってきました。

 

写真1 白化時(上)と、回復した様子(下) 

写真1 白化時(上)と、回復した様子(下)

 

 調査は、御幸浜の水深10mと3mの地点で、50cm×20mのライン上のサンゴの種類とサンゴの割合(被度)を調べるベルトトランセクト法で行いました。
 水深10mの地点は、当初80%のサンゴが白化していました。しかし、回復が早く、翌年には白化はほとんど観察されませんでした。また、被度も白化の影響で41.9%(※)から33.5%に減少しましたが、その後は順調に回復し、4年後には42.4%と白化前を上回るまで回復しました。
 水深3mの地点は、当初50%のサンゴが白化していました。白化による死亡が多かったため、翌年の被度は40.3%(※)から17.4%にまで減少していました。しかし、その後は10mと同様に順調に回復していき、4年後には26.1%、10年後には30.2%まで回復しました(図1)。また、この10年間で新たな白化は確認されていません。

図1 御幸浜3m地点の被度および種組成


図1 御幸浜3m地点の被度および種組成

※2003年10月は死亡したサンゴも被度に含め、
便宜的に白化前の被度と仮定しています。

 

 水深3m地点での被度をサンゴの種類別にみると、2014年現在は主にナガレサンゴ属、キクメイシ属、ノウサンゴ属、トゲキクメイシ属、コモンサンゴ属で構成されていることがわかります(図1)。白化から10年が経過し、このように多様なサンゴが生育できる安定した環境が維持されているようです。