ハタ類の種苗生産

 小笠原諸島沿岸域には魚価の高いハタ類(ハタ亜科)が約40種程度生息しており、ホウセキハタは、「イス」という地方名で呼ばれている主要な漁業対象種です。

ホウセキハタ

 当センターでは、種苗生産技術(卵を採って稚魚まで育てる技術)が確立されたアカハタに続くハタ類の栽培漁業対象種として、平成15年よりホウセキハタ親魚を養成しています。そして、本年4月12日にわずか7000粒ですが、正常に発生している受精卵を初めて採集することができました。これらの卵は1t水槽に収容して種苗生産実験を開始しました。飼育方法はアカハタに準じて行ったのですが、残念ながらふ化後23日目までには仔魚は全滅してしまいました。しかしながら、今後、本種の種苗生産を行う上での貴重なデーターを得ることができましたので、概要をご紹介します。

  ①産卵した親魚の大きさは、全長38.6から64.5センチメートル(平均54.6cm)、体重は1.1から5.5kg(平均2.9kg)でした。②受精卵の卵径は平均862マイクロメートル、油球径は平均194μ mで、ふ化直後の仔魚の大きさは全長1.80ミリメートルでした。

    ふ化直後  ふ化後2日目

 ③摂餌開始時の全長は2.85ミリメートルと一般的な海産魚の仔魚より小さく、初期餌料は通常のS型ワムシでは大きいと考えられたため、背甲長150μ m以下の小さいワムシを給餌しました。給餌開始6時間後に仔魚を数尾観察した結果、いずれの仔魚もほぼ満腹で、1尾当たり平均24個体のワムシが腸管内から確認され、摂餌状態は良好でした。④成長にともなう色彩や体形の変化は、アカハタの仔魚とほとんど同じで、腹部、尾部には黒色素胞がみられ、黒い眼とあわせて、上からみると魚体は白黒の縞々模様を呈していました。そして、全長405mm位から背鰭と腹鰭が急激に伸長しました。

     ふ化後5日目 ふ化後9日目

ふ化後19日目

今後に向けて

 今回の飼育では、ふ化後10日目では約2500尾の仔魚が生残しており(生残率は約35%)、飼育初期の斃死はある程度抑えることができました。しかしながら、10日齢以降急激に減耗し、23 日目には水槽内に仔魚が見えなくなったため飼育を中止しました。10 日目以降の減耗の原因は不明ですが、おそらく環境条件が本種にとって不適であったと考えられました。今後、飼育試験を重ねて、技術確立を目指していきたいと思います。