刺身で絶品!「おがさわらメカジキ」

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 小笠原では、「世界で唯一」昼間水深600m前後でメカジキを漁獲しています。このあたりの水温は、通年9~11℃、まるで冷蔵庫の中にいるような環境です。この環境に対応できるよう、メカジキには脂質が多く含まれています。
 現在、小笠原島漁業協同組合とともに、その「脂ののり」について、小笠原村父島集落における離島再生支援事業を活用して調べています。
 メカジキの「脂ののり」は、体の各部位を20箇所に分け、3尾について化学的検査(ソックスレー法)によって、脂質の含有量を調べました。その結果、もっとも含有量の多かった部位は、腹部で100g中26.9g。身全体の平均も100g中14.5gでした。これは、クロマグロの赤身部分が1.4g、大トロの部分が27.5g(五訂日本食品標準成分表)なので、クロマグロに比べても遜色ない値でした。
 さらに「脂ののり」を水揚時に魚に傷を付けず、簡単にしかも正確に調べられるよう、近赤外分光分析器の活用も検討しています。この装置は、みかんなど果物の糖度を計るために使用されているものです。
 化学的検査により脂質含有量を調べた60個のサンプルについて近赤外スペクトルを測定し、脂質含有量との関係について調べました。その結果、透過光では相関係数R=0.6152、吸光度でR=0.7165であり、水揚げされたメカジキを計測する場合、スペクトルの吸光度を用いる方が良いことが分かりました。  

図1 スペクトル変化

図1 スペクトル変化

 図1は、吸光度1次微分スペクトルですが、どのサンプルも940nm付近(矢印点線部分)で強い吸収が行われたことがわかります。

 

図2 脂質含有量とスペクトル推定値の関係

図2 脂質含有量とスペクトル推定値の関係

 

 近赤外分光分析器でメカジキの脂質含有量を測定するための関係式は、図2とおりです。今後、本器を用いて、水揚時に脂肪含有量を推定することが可能となりました。また、1尾全体の平均値は、背中の5箇所を測って得られる値と近似していることも分かりました。
 メカジキの「脂ののり」は、全身はマグロの「赤身」以上、腹部は「大トロ」と良い勝負です。今後、「刺身」や「寿司」などでの利用が広がれば、内地に出荷してももっと高値で取引されるようになるのではないでしょうか。いつの日か「大間のマグロ」ならぬ「小笠原のメカジキ」と言われる日が来るかもしれません。
これからの季節、メカジキは1年中でもっとも脂がのる時期です。小笠原の新鮮なメカジキを皆様もぜひ味わってください。

 

図3 魚体を20箇所に切り分ける

図3 魚体を20箇所に切り分ける

 

)近赤外線分光器による計測

図4 近赤外線分光器による計測

 

図5 化学的検査のため150gごとに袋詰

図5 化学的検査のため150gごとに袋詰