第3巻第8号(通算27号) 東京都小笠原水産センター
2001年12月12日発行

来てみて驚いた! 「新米無線通信士」徒然日記(第二話)

 小笠原村には無線機器の取扱業者が無いこともあって、無線機をはじめ、魚群探知機、方向探知機、レーダー、GPS、オートパイロット等の修理依頼がかなりあり、限られた器材や在庫部品の中で対応するようにしている。たいへん苦労することもあるが、故障を直す達成感と島民の喜ぶ顔が忘れられなくなる。また、母島にも漁協の無線局があり、二ヶ月程度毎に渡島して無線設備の点検清掃等を実施するとともに、巡回指導を行っている。
 その他、水産センターの揚水ポンプ設備が故障したり、ケーブルが焼けたりと、強電関係の事故もあったりしたが、本来の職種が電気の技術屋であるために重宝されているようだ。なにしろ、床屋のヘアードライヤーやらカセットデッキの修理もあり、無料で島の便利屋的な面もあるが、業務に支障のない限りはなるべく対応している。
 父島での時間の刻み方は、内地とは少し違っていて、始業が8時で昼休みが1時間半ある。朝が早くても通勤ラッシュとは無縁の世界の職住接近型だから、起床時間は内地の場合より、むしろ遅いくらいである。そして、昼休みが30分長いので、ゆったりできるところが美味しい。しかし、当無線局では聴守時間に穴をあけることはできないので、昼休み時間中にも最低1名が勤務している。そのため、昼休みがズレているのである。
 お恥ずかしながら、無線通信という仕事が気象と密接な関係があるとは、やってみて初めて分かったことだった。目的を考えてみれば何てことないのだが、昔中学校の授業で習った天気図の書き方が、20年以上も経った今になって役に立うとは思いもしなかった。人生なんて、いつ、何が役に立つかなんて分からないものだから、勉強というものはしておいて損はないのよね。そういう意味で、現代を生きる子供達もどうかサボらず頑張って欲しい。
 無線局で働くためには、法律に定められた無線従事者免許が必要だ。以前は高度な熟練技能を要するとされるモールス電信が必須だったが、人工衛星を使った地球規模の海上通信システムが世界的に整備されたので廃止された。モールスが、免許取得の大きな障壁となっているのは確かで、無線通信士というものを誰もがなれる職業のカテゴリから遠ざけていたのだが、廃止になったことによって、比較的容易に取得できる第四級海上無線通信士(四海通)の免許でも従事できるようになってきたのであるので、これまで免許の壁で閉ざされてきたこの職種の世界も、今後は広く門戸が開いて新風が吹き込まれていくことだろう。ちなみにこの四海通の試験は規制緩和政策の一環ということで、今年度から電気通信術の試験が削られ、学科だけになった。(もう少しつづく)


図1 小笠原水産センター本館(工事中)

図1 小笠原水産センター本館(工事中)