第2巻第8号(通算17号) 東京都小笠原水産センター
2000年11月6日発行

アオウミガメ産卵状況調査

 小笠原諸島は日本におけるアオウミガメの最大産卵地で、毎年春から夏にかけて100kgを越える大きなアオウミガメが産卵のために回遊してきます。春先に島の沖合で交尾を行った雌ガメは、父島列島に点在する30余りの海岸に分散して産卵上陸します。産卵は夜間に行われ、1頭の雌ガメは1シーズンに約4回産卵し、1回に約80個から120個の卵を産むことがわかっています。光や物音、障害物などがあると上陸しても産卵せずに海に戻ってしまうこともあります。
 アオウミガメの上陸・産卵調査は1978年に水産センターによって開始され、現在はアオウミガメの生態の研究や保護、増養殖を行っている小笠原海洋センターに引き継がれています。水産センターでは今年、小笠原海洋センターと合同で父島列島のアオウミガメの上陸、産卵調査を行いました。
 調査を日中に行う場合には、海岸に残された足跡やカメが砂を掘った跡から産卵場所を推測する事から始まります。次に、その周辺に鉄筋棒を刺し産卵巣を探ります。産卵巣は雌ガメが一度穴を掘り、産卵後に埋め戻しているため、他の部分よりも柔らかくなっています。産卵巣を探り当てたら手で砂を掘り、卵の有無、発生段階などを確認し、再び元通りに戻します。ただし、カメの生態に詳しい調査員がいるかいないかで産卵巣の発見数が大きく異なる場合があります。当水産センターにも「何故ここに産んでいるのがわかるのか」というぐらいのカメ調査の達人がいます。発見した産卵巣は後日の調査での重複計数を避けるために、2点の目標物から距離を計測し記録しておきます。
 今シーズンの産卵期は5月初旬に始まり、7月から8月をピークに9月初旬まで続きました。各月の産卵数は5月-46ヶ所、6月-168ヶ所、7月-205ヶ所、8月-187ヶ所、9月-31ヶ所で、2000年度の父島列島における産卵は25海岸で合計637ヶ所確認されました。
 これまでの標識放流調査などからアオウミガメは約4年の間隔で小笠原に産卵にやってくることがわかっています。上陸・産卵調査開始以来、4年間ごとの平均産卵巣数は徐々にではありますが増加傾向にあり、アオウミガメ保全にとって非常に喜ばしいことです。
しかし、アオウミガメは明治初期には年間1,800頭も捕獲できるほどの資源があったとされており、当初の資源量と比較するとまだまだ資源量は少ないといえます。今後も引き続き、アオウミガメに対する調査、保全を続けていくことが必要です。いつまでもアオウミガメが産卵に帰ってくる小笠原であることを願います。
参考文献;うみがめニュースレター


写真1 放流される3歳ガメ

写真1 放流される3歳ガメ

写真2 産卵巣の調査風景

写真2 産卵巣の調査風景
2点の目標物から位置を計測している