第3巻第1号(通算20号) 東京都小笠原水産センター
2001年4月18日発行

嫁島解禁へ向けての資源量調査


父島列島から約50km北に位置する聟島列島の嫁島周辺(距岸2km)は、アカハタ、イセエビ類等の磯根に生息する魚類・甲殻類の減少を危惧した小笠原地区の漁協および漁業関係者の合意により、1998年3月1日より自主禁漁区(休漁場)とされています。今年の3月で禁漁措置開始から3年間が経過し、漁協では秋に解禁する計画が進められています。小笠原水産センターでは漁協の協力を得て、嫁島浅海域のアカハタを中心とした資源量推定調査を実施し、3年間の禁漁効果を検証しました。
 調査は平成13年1月から2月にかけて行いました。いずれも一本釣りによる釣獲調査で、採集した全ての漁獲物を船上で測定し、腹ビレ先端切除の標識を施した後、現場へ放流しました。5回の調査でアカハタ342尾(平均全長:29.9cm)、その他シロダイ、ナンヨウカイワリ等22魚種195尾を採集しました。また、嫁島との比較のために父島列島の西島で調査を行い、アカハタ76尾(平均全長:28.6cm)、その他シロダイ、オジサン等13魚種26尾を採集しました。
 アカハタについて両調査を比較すると、平均全長、単位努力量あたりの漁獲量(CPUE:今回は漁獲尾数/調査人数/時間で計算)ともに西島に比べ嫁島の方が大きく、3年間の禁漁の効果が示唆されました。
 嫁島におけるアカハタ資源量を推定するために行った標識放流調査では290尾を放流し13尾を再捕しました。この結果をもとに資源量を算出すると、調査地点周辺に釣獲サイズのアカハタが合計1,992尾(下限960尾、上限2,119尾)生息していたと推定されます。これにより嫁島浅海域(嫁島周辺の水深30m以浅海域面積の5割と仮定)の資源量は約16,000尾(下限7,700尾、上限17,000尾)と推定されましたが、アカハタの生息は水深100m程度まで確認されており、実際にはさらに多くの資源量が見込まれます。


 今後も漁協の協力を得て解禁後の調査を行うとともに、嫁島に変わり新たに禁漁区の設置が計画されている媒島周辺について、磯根生物の資源量調査を行っていく予定です。


調査風景

調査風景


腹ビレ先端切除の標識を施したアカハタ

腹ビレ先端切除の標識を施したアカハタ