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漁獲量の推移  

 八丈島におけるキンメダイの水揚げが、過去最高を記録しました。これまでの最高は、平成21年の360トンでしたが、本年は既にその数値を超え、12月14日現在、426トンとなっています(図1)。漁場における魚群密度を示すCPUE(1航海当り漁獲量)も過去最高を記録しています。

 

図1

図1 八丈島におけるキンメダイの漁獲量とCPUE

 

 黒潮流路と好漁の関係について

     

 好漁の要因を検討するため、同じく好漁だった平成21年と本年の黒潮流路について検討しました。両年とも前年の秋から伊豆半島沖で、黒潮が北緯32度付近まで南下・蛇行し、その後4月にかけ北緯34度付近まで北上しています。両年とも流路は5月に再度南下し、その後再び北上するなど、黒潮の動きが激しい年でした。この間、流路の南下期より、北上期に好漁が生じ易い傾向がみられました(図2)。標識放流の結果から、キンメダイは沿岸漁場から沖合漁場に向け、大規模な南下移動をすることが知られております。しかし、遊泳力がそれほどないと思われるキンメダイが、どのようにして黒潮の南側に移動するのか、大きな謎でした。今回のデータから、黒潮流路が大きく蛇行・南下した際、その内側にできる反時計回りの渦(図3)を利用して魚群が移動し、黒潮の北上期に新たな漁場に着底していることが推測されます。魚群の移動実態ついては今後、標識放流の充実も含め、種々の手法を用いて検証する予定です。

図2 

図2 黒潮流軸の位置とキンメダイ漁の関係(流軸位置

は、海上保安庁HPの「黒潮詳細情報」の数値データを使用)

折れ線は、東経139度線(伊豆半島沖)を黒潮流軸が横

切る位置(緯度)を示す。朱色は月間CPUEが各月の平均値

より30kg以上高い月を示す。

 

図3 

図3 黒潮と黒潮内側域の流れ(気象庁HPより引用、

一部改変。右側のカラースケールが流速を示す)

黒潮の南下・蛇行時には、その内側域に反時計回りの

渦が生じることが多い。