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 八丈事業所では、八丈島の郷土料理「ブド」の原材料として利用される海藻「カギイバラノリ」の陸上養殖技術の開発に取り組んでいます。今回、「人工採苗」技術を利用したカギイバラノリ培養を行ったので紹介します。

 

人工採苗ってなに?  

 「人工採苗」とは、海藻の種である「胞子」から人工的に苗を得る技術です。これまでのカギイバラノリ養殖は、島の沿岸に生える天然の海藻を採集し、水槽で増やしながら収穫するという方法でした。しかし、天然で採れる時期は概ね3月~7月頃であり(図1)、養殖できる時期が限られてしまうという問題がありました。そこで、時期を問わず養殖用の海藻を得るため、人工採苗の技術開発が必要となりました。

 

図1 八丈島底土海岸におけるカギイバラノリ着生量の推移

図1 八丈島底土海岸におけるカギイバラノリ着生量の推移

 

 採苗のポイントは?     

 海藻の人工採苗で重要なのは、対象となる海藻以外の藻類(「雑藻類」と呼ぶことにします)の混入を防ぐことです。そこで、胞子を持った成熟海藻は生かし、雑藻類のみを枯らすよう洗浄処理を施し、雑藻類を含まない胞子を多数得ることに成功しました(図2)。胞子は順調に生長し、純粋なカギイバラノリ種苗を多数作ることができました。

図2 カギイバラノリ胞子

図2 カギイバラノリ胞子 

人工採苗を育てる 

 この「人工種苗」を、実際に屋外水槽で培養したところ、天然海藻と変わらない良好な生長率で培養することができました(図3)。この結果、人工種苗も養殖用の苗として利用できることが明らかとなりました。
 安定した種苗生産が可能になれば、天然海藻に頼らず、1年を通して養殖を行う方法を確立することも可能になります。今後は、計画的に種苗生産を行うため、カギイバラノリの成熟に適した環境条件(温度、光)などを調べていく予定です。

図3 人工採苗を用いた屋外培養 

図3 人工採苗を用いた屋外培養