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八丈島の春は害虫に要注意

 八丈島は温暖・多湿な気候に恵まれ、農作物が良く育つ一方、農作物に被害を与える害虫の生育も盛んです。今年度、八丈フルーツレモンで化学農薬(殺虫剤)だけに頼らない害虫防除技術の試験を実施したので、その結果をご紹介します。

 

ネットを張る

 一般的に、作物の周囲をトンネル状のネットで覆ったり、ビニルハウスの開口部にネットを張る等すれば、害虫が農作物に触れないようにできます。当所の八丈フル―ツレモンでも、1mm目合いのネットを全面に張ったハウス(図1)を使いアゲハチョウの侵入防止や、アブラムシ、ハモグリガを少なく抑えることができました。ただし、目合いより小さな害虫には効果が低いことや、一度害虫が中に入ってしまうと被害が大きくなる欠点があります。

 

試験用のネットハウス

図1 試験用のネットハウス

 

天敵を使う

 害虫には様々な天敵がいて、これを人の手で増やし、害虫防除に使えるようにしたものを「天敵農薬」と呼びます。様々な種類がある中で、今年度は「スワルスキーカブリダニ」のパック製剤(図2)の効果を試してみました。スワルスキーカブリダニは、植物に被害を与えるハダニ等を食べる天敵ダニで、もちろん、農作物や人畜には無害です。また、天敵ダニがパックに入っているので、農薬にもある程度耐えられます。今回の天敵ダニの導入の結果、ハダニ等の発生が抑えられ、殺虫剤の使用も大幅に削減できました。ただし猛暑の時期と寒い時期には効果が低いことなどが、今後の検討課題です。

天敵ダニのパック製剤とハダニ

図2 天敵ダニのパック製剤とハダニ(右 体長0.3~0.5mm)

 

フェロモンを使う

 昆虫には、雌が出す「性フェロモン」というにおいに雄が誘われて交尾・産卵するものがいます。これを利用したのがフェロモン剤(図3)です。今回は、レモンのハウスにフェロモン剤を大量に置いて、ハウス内にレモンの害虫であるチャハマキの雌のにおいを充満させ、雄が雌を見つけられなくする技術について試験を実施しました。数か月間フェロモン剤を設置し続けたレモンのハウスではチャハマキが少なくなっており、効果が認められました。

フェロモン剤とチャハマキ幼虫

図3 フェロモン剤(オレンジ色の紐)とチャハマキ幼虫(右)

 これらの技術は一長一短あり、単独で完全に害虫を防ぐことはできませんが、化学農薬を含む様々な技術を組み合わせた「総合防除」を行うことで、効率よく害虫の被害を軽減することができます。当所では八丈フルーツレモンを中心に、今後も様々な害虫防除技術の研究を進め、「総合防除」技術の確立を目指します。