八丈島でのテングサの減少とその回復に向けた取り組み

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テングサは寒天の原料海藻として重要で、伊豆諸島は質の良いテングサの産地として有名です。八丈島のテングサの水揚げは、1980年代の半ばから1990年代にかけての多い年には600トン以上の水揚げがありました。ところが近年、急激に減少し、2004年以降は1トン以下と低迷しています(図1)

    図1八丈島のテングサ水揚げ量

図1 八丈島のテングサ水揚げ量

 

今年(2009年)のテングサは?

八丈事業所では、2005年から八丈島のテングサがなぜ急激に減少したのか、その原因を明らかにする研究に取り組んできました。その結果、近年、黒潮の影響により、テングサの生長に不利な水温が高く、海水中の栄養分が少ない海況が継続していることが分かりました。また、わずかに残っているテングサは、海の中に淡水が湧いている場所に生えており、その淡水の栄養を使って細々と生き残っているということも明らかとなりました。
昨年末から今夏にかけて黒潮の流れが変化し、八丈島は約10年ぶりにテングサにとって好適な、水温が低く、栄養分の多い水に覆われました。昨年と今年の8月のテングサを比べてみるとその効果は一目瞭然で、今年のテングサは昨年より長さが2倍、重さが20倍になっていました(写真1)。しかし、大きく落ち込んだ水揚げが回復するには至りませんでした。 

てんぐさ

  写真1 てんぐさ

   

テングサの回復に向けて!

今回、海況が変化しテングサの生長に良い条件が整えば、急激にテングサが回復するということが分かりました。八丈事業所では、海の環境調査を継続して行うとともに、海況が良くなった時にテングサの苗を天然の海に移植するための人工採苗技術の開発にも取り組んでいます(写真2)。今後は、海況好転時にこの技術を生かして、テングサの回復を助長する取り組みを行っていく予定です。

人工採苗したテングサ