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 ホシゾラホタルイカの身投げ現象が発生!

 平成26年4月28日に八丈島の底土海水浴場にイカが大量に打ち上げられているとの情報が入りました。現地でサンプルを採集し、種判別をした結果、ホタルイカの仲間であるホシゾラホタルイカAbralia (Astrabralia) astrostictaであることがわかりました。

 

【ホシゾラホタルイカとは?】

 ホシゾラホタルイカは、世界中で40種あるホタルイカモドキ科の1種で、富山県などの日本海側で漁獲されるホタルイカWatasenia scintillansに近い種類です。このホシゾラホタルイカは、日本南岸からオーストラリア、ハワイにかけての中西部太平洋に分布しています。ホタルイカの仲間は通常水深200~700mの光の届かない中深層に生息しており、ホシゾラホタルイカも同じ水深域に生息していると考えられています。

写真1 八丈島底土海水浴場に打ち上げられたホシゾラホタルイカとサバの幼魚

写真1 八丈島底土海水浴場に打ち上げられたホシゾラホタルイカとサバの幼魚
(平成26年4月28日撮影)

 

【なぜ打ち上げられたか?】

 では、普段、光の届かない深い海にすむホシゾラホタルイカがなぜ打ち上げられたのでしょうか?
 この謎を解くカギは、八丈島沿岸の水温と月にありました。4月26日時点の人工衛星の画像では、八丈島の西側に冷たい水の塊が存在していました(図1)。この冷たい水の塊が27日の午後には八丈島沿岸に到達し、20℃弱あった水温が18℃まで下がっています(図2)。この18℃の水温は黒潮の中では水深250m前後で観測されます。しかし、27日夜は新月に近く闇夜であったことから、水深200m前後にいたホシゾラホタルイカが水温低下と闇夜のため、表層近くに移動し、海底と間違えて海岸線に寄ってきたと考えられます。
 富山湾では産卵のために接岸したホタルイカが新月の夜に海岸に打ち上げられる『ホタルイカの身投げ』が春の風物詩となっています。今回、ホシゾラホタルイカも冷水塊の通過により同様の現象が起きました。この時、底土海水浴場の海岸はホシゾラホタルイカの青白い光に彩られていたと考えられます。

図1平成26年4月26日の人工衛星による表面水温画像

図1 平成26年4月26日の人工衛星による表面水温画像

 

図2 平成26年4月27~28日にかけて神湊漁港定地水温の観測結果

図2 平成26年4月27~28日にかけての神湊漁港定地水温の観測結果
黒塗りの部分は夜間を示す。