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クサヤモロとは

 クサヤモロ(写真1)は世界の暖海域に広く分布するムロアジの仲間で、伊豆諸島から小笠原諸島では普通にみられる魚です。八丈島においては、キンメダイ、トビウオ、カツオと並び重要な漁業資源です。しかし、近年は加工品であるくさや需要の低迷もあり、漁獲量は100~150t程度になっています(図1)。

クサヤモロ写真

 写真1 クサヤモロ

図1 八丈島におけるクサヤモロ漁獲量推移

図1 八丈島におけるクサヤモロ漁獲量推移

鮮度試験の目的

 クサヤモロの刺身は淡白な味であることから、島では島唐辛子を醤油に少し入れ、「ピリッ」と辛味を効かせて食べることが多く、また、島焼酎との相性も良いことから、地元の人はもとより、観光客にも人気があります。

 しかし、鮮度落ちが早く、島外で刺身として食べることは困難と言われていました。そこで、島外においても、こうした島の食べ方の可能性を検証し、ムロアジの消費拡大と島焼酎文化の振興に寄与するため、鮮度試験を実施しました。 

 

魚の鮮度

 筋肉中に含まれるエネルギー源のATP(アデノシン三リン酸)は魚の死後、ADP(アデノシン二リン酸)→AMP(アデニル酸)→IMP(イノシン酸)→HxR(イノシン)→Hx(ヒポキサンチン)の順に分解が進みます。ATP分解生成物全体に対するイノシンとヒポキサンチンの割合

  [(HxR+Hx)/(ATP+ADP+AMP+IMP+HxR+Hx)]×100(%)

はK値と呼ばれ、広く鮮度指標として利用されています。

 一般的にこの数値が20%までは刺身として適当とされています。

 

鮮度試験

 平成28年10月20日、漁業調査指導船「たくなん」による調査で漁獲したクサヤモロを島しょ農林水産総合センター八丈事業所内の冷蔵庫で氷蔵し、漁獲8日後までK値を測定しました。

 その結果、K値は4日後16.4%、5日後24%、8日後40%となり、漁獲4日後まで刺身で利用できることが明らかになりました(図2)。

図2 クサヤモロ漁獲後のK値の変化

図2 クサヤモロ漁獲後のK値の変化

 

島外輸送試験

 12月、地元船が漁獲したクサヤモロを用いて輸送試験を行いました。八丈島から浜松町にある島しょ農林水産総合センター本所に氷蔵で空輸し、4日後にK値を測定したところ、15.7%と八丈事業所の冷蔵庫で氷蔵した場合と近い数値となりました。この結果からも漁獲したクサヤモロは島外輸送しても4日後まで刺身で食することが可能であることが判りました。

 漁獲翌日に定期船で島外出荷し、夜に都内へ到着した場合、保存状態が良ければ3日間は刺身で利用できることになります。  

 島外出荷の可能性が広がることを期待します。