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ツマリツノザメの飼育  

 去年の11月から10トンの屋外円形水槽でツマリツノザメ3尾を飼育しています。調査船「たくなん」で底魚調査時に採集したもので、全長が60cmほどのメスです。このサメは、深海性のツノザメの仲間で水深100~600mに生息しています。八丈島周辺にはトガリツノザメ、フトツノザメといったツノザメの仲間がいますが、ツマリツノザメはその名の通り、吻端が少し短く、鼻先がつまったように見えるのが特徴です。

 

 稚魚の遊 

 飼育開始から2ヶ月ほどたった1月7日に水槽内に全長約20cmの2尾の子ザメが遊泳しており、すでに死亡していた1尾とあわせると計3尾が確認できました。この3日後にも1尾の産仔がありましたが、その個体は尾柄部と卵黄がない状態で死亡しており、おそらく親ザメにかじられてしまったのでしょう。
 サメの生殖方法はいくつか知られていて、このサメは胎生(親と同じ姿で生まれてくる)で、母ザメの体内で卵黄からの栄養で成長します。ツノザメのメスは一腹に2個体の胎仔を持つので、3尾のうちの2尾が子ザメを産んだようです。産まれた個体はどれもまだ卵黄をぶらさげており、その状態で遊泳しているものもいました(写真1)。

写真1 卵黄が付いたままで泳ぐ個体

写真1 卵黄が付いたままで泳ぐ個体 

 

 また、このサメは第一背鰭と第二背鰭の前縁に鋭い棘を持っていますが、 産まれたばかりなのでまだ表皮をかぶったままでした(写真2)。卵黄が大きいうちは餌を与えてもまったく見向きもしませんでしたが、小さくなるにつれて餌に興味を示し始め、生後一週間後から少しずつ餌を食べ始めました。
 深海性のサメの産卵(または産仔)や飼育例はあまり多くないので、今後も大事に飼育していきます。

 

写真2 第二背鰭の前縁の棘部分

写真2 第二背鰭の前縁の棘部分、
左は棘が露出しているもの、右は表皮をかぶっているもの