イサキ


標準和名

イサキ

学名

Parapristipoma trilineatum (Thunberg)

地方名

イサギ(東京、神奈川、静岡)、イセギ(高知)

分類

スズキ目、イサキ科、イサキ属

形態

体は比較的細長く、側扁する。背ビレは1基で鋭い棘をもつ。尾ビレは浅くくぼむ。エラブタの後縁にもトゲがある。生息場所によって体色が異なり、背部は暗青色ないし黄土色、腹部は銀白色。体長20cmくらいまでの若魚には体側に3本の暗色縦帯があるが、体長25cmくらいよりも大きなものでは消失する。体長45cmほどに達する。

分布

沖縄を除く本州中部以南から東シナ海に分布する。伊豆諸島では神津島・三宅島以北の海域に多く、八丈島では稀れ、小笠原諸島には全く生息しない。

生態

沿岸の浅海の岩礁域に生息している。季節的な移動を行い、春から夏にかけては浅場に、秋から冬にかけては深場に移動する。産卵期は6月から8月。卵は直径約0.9mmの球状で、産卵後24時間から30時間ほどでふ化する。ふ化仔魚は全長1.7mmほどで3日後から餌を食べ始める。1歳魚で体長約16cm、2歳で約21cmに成長し、満2歳でオス・メスともに成熟する。 食性は動物食性で、キビナゴ、マイワシ、カタクチイワシなどの魚類やカイアシ類などのプランクトンを食べる。伊豆大島周辺の調査では、成魚はカイアシ類を中心としたプランクトン食である。一方未成魚では、端脚類のワレカラ類を主体に食べていた。水温18℃付近よりも高い水温帯で摂餌が活発になる。

資源の利用と保全

伊豆諸島北部海域で、一本釣や定置網、刺網などによって漁獲されている。また、新島や神津島では「建て切り網」という潜水追い込み漁法で漁獲している。年間漁獲量は70トンから140トン程度で、伊豆諸島における重要な漁獲対象種である。本種は人気のある遊漁対象種で、磯からの釣りや遊漁船によって釣られている。したがって、観光産業振興の面からみても重要な資源である。

調理法

淡泊な白身魚で、刺身やたたき、塩焼き、煮魚、ムニエルなど、何の料理にも向く。「梅雨イサキ」の名があるように、産卵前の初夏は脂がのってとくに美味。刺身をとったあとの“あら”で出汁をとり、湯がいたアシタバを入れた澄まし汁は、野趣あふれる伊豆大島の郷土料理。
標識放流直後のイサキ幼魚
標識放流直後のイサキ幼魚
アシタバ(明日葉)
アシタバ(明日葉)