ムツ


標準和名

ムツ

学名

Scombrops boops (Houttuyn)

地方名

クロムツ(伊豆諸島)、ナツメ(伊豆大島)、ムツゴ(小型魚:伊豆諸島)、ロク・ロクノウオ(宮城)、カラス(富山)、クジラトウシ(九州)、クルマチ(沖縄)

分類

スズキ目、ムツ科、ムツ属

形態

体はやや細長く、側扁する。口と目は大きく、両アゴには多数の鋭い歯が生える。エラブタには二本のトゲをもつ。背ビレは2基で尾ビレは二叉する。胸ビレは細長い。体は比較的大きなウロコで覆われる。このウロコは幼魚では非常に剥がれやすいが、成魚では剥がれにくくなる。幼魚では、背部が暗赤色ないし黄褐色で、腹部はこの色がやや淡くなる。成魚では、背部が暗紫褐色で腹部はこれがやや淡くなる。口の中は暗色。体長1m以上に達する。

分布

北海道南部から東シナ海を経て台湾まで分布する。東京の海域では、伊豆・小笠原諸島で見られる。漁獲量は伊豆諸島で多い。

生態

成魚は水深200mから700m前後の岩礁域に生息する。産卵期は秋から春で、紀伊半島沖で11月から12月、高知沖で2月から3月。卵は球形で水面を漂いながらふ化する。伊豆大島では、毎年夏から秋にかけて体長10cm前後の稚魚が沿岸に群で出現する。体長20cmくらいまでの幼魚は定置網によく入り、「ムツゴ」と呼ばれている。その後成長するにつれて沖合へ移動し、体長30cm前後の個体は水深100mから150m層に出現する。仔稚魚は動物性プランクトンを食べるが、成長するにつれて魚食性が強くなる。

資源の利用と保全

成魚は、主として伊豆諸島北部海域で底魚一本釣りにより漁獲される。幼魚は定置網などで漁獲される。年間漁獲量は60トンから100トン程度で、伊豆・小笠原海域の重要な底魚資源である。

調理法

脂ののった白身魚でクセが無く、刺身や煮魚、鍋物のほかフライや唐揚げなどの洋風料理にも向く。冬季は特に脂がのって美味。ムツは内臓や皮も美味しい魚で、捨てるところがないと言われている。刺身を取ったあとのアラをぶつ切りにしたみそ汁は、冬の冷えた体を芯から温めてくれる。

定置網で漁獲されたムツの若魚(ムツゴ)
定置網で漁獲されたムツの若魚(ムツゴ)


一本釣り
一本釣り