ザトウクジラ
ザトウクジラ


小笠原のザトウクジラのブロウ
小笠原のザトウクジラのブロウ
フルークアップダイブ
フルークアップダイブ

標準和名

ザトウクジラ

学名

Megapteranovaeangliae (Borowski) 

地方名

特になし

分類

クジラ目,ナガスクジラ科,ザトウクジラ属

形態

体長は13mから15m、体重は25トンから30トンに達し、雌のほうが雄よりやや大きい。胸鰭は長く体長の約1/3に達する。体色は背側が黒もしくは黒灰色で腹側は白色であるが、いろいろなパターンがある。下顎と上顎にはこぶ状の隆起があり、うね(畝)は14本から35本、幅15cmほどで下アゴからへそまで達する。クジラヒゲは黒色で長さ70cm、幅30cm程度。片側に270枚から400枚ある。

生態

南極から北極にいたる全世界の海域に分布するが、赤道を越えて移動することはほとんどない。北太平洋では、夏は高緯度のアリューシャン方面で索餌活動を行い、冬季から春季には熱帯から亜熱帯域の小笠原、沖縄、台湾、ハワイ周辺で繁殖行動する。その回遊距離は数千キロにおよぶ。特有の採食行動を行い、気泡を使って餌生物を囲い込み、一気に口の中に入れる。主な餌は小型甲殻類、魚類である。4歳から7歳で成熟し1年から3年間隔で産出する。最高年齢は50歳から60歳。尾びれの腹面側の模様は個体ごとに異なり、個体識別に用いられる。小笠原では1月から5月にホエールウオッチングすることができる。歌うクジラとして知られ、リズムとメロディーを持った鳴き声で雄クジラが繁殖期に歌う。近年、小笠原ではマッコウクジラ Physeter macrocephalus  Linnaeus もホエールウオッチングの対象となっている。 小笠原海域での捕鯨の歴史は、1820年代にアメリカの捕鯨船がマッコウクジラを捕獲したのが始まりである。その後、1860年代に入りジョン万次郎によって日本初の捕鯨が同海域で行われ、マッコウクジラを漁獲している。さらにその後、戦前(1920年代)、戦後と商業捕鯨が継続され、ザトウクジラ、マッコウクジラのほかに、ニタリクジラ Balaenoptera edeni  Anderson 、イワシクジラ Balaenoptera borealis  Lesson 等が捕獲されたが、商業捕鯨の全面禁止にともない、1988年には小笠原の捕鯨も中止された。伊豆諸島周辺では2002年3月から7月に7件のクジラ類のストランディング(座礁)が相次いで 発見された。発見された種類は大島でセミクジラ Eubalaena glacialis (Muller) 、コマッコウ Kogia breviceps (De blainville) 、アカボウクジラ科の一種など、神津島でマッコウクジラ、コマッコウであった。

資源の利用と保全

泳ぎがゆっくりで、船を怖がらないザトウクジラはホエールウオッチングに適しているが、かっては捕鯨の対象として日本沿岸でも多数捕獲された。20世紀初頭には、近代的な捕鯨の初期の捕獲対象物となり、南半球では10万頭以上のザトウクジラが捕獲され、資源は大打撃を受けた。1966年から全世界で捕獲が禁止されており、資源はやや増加傾向にある。現在、北太平洋では2000頭前後が生息していると考えられている。

調理法

尾の身(尾柄部)の刺身が絶品で、肉や内臓、皮などが様々な方法で調理される。しかし、現在商業捕鯨は禁止されており、一般には食べることができない。

伊豆大島の海岸に座礁したセミクジラ
伊豆大島の海岸に座礁したセミクジラ