フクトコブシ


標準和名

フクトコブシ

学名

Haliotis diversicolor diversicolor Reeve

地方名

トコブシ(大島)、コナガレ(三宅島)、アブキ(八丈島)

分類

古腹足目、ミミガイ科、アワビ属

形態

アワビに似るが小型で、最大で殻長8cmから9cm、80g 程度。貝殻の外面は褐色。内面は真珠光沢がある。外縁に6個から8個の穴があいているが,アワビ類ではこれが4個から5個なので区別できる。伊豆諸島では南に行くほど殻高が高くなる。

分布

伊豆諸島、種子島

生態

伊豆諸島における産卵期は、北部で早く、南部で遅い傾向が認められる。すなわち、大島では8月から9月、三宅島で9月から10月、八丈島で10月から11月である。 受精卵は球形で、卵径200μm前後。受精後20日程度で殻長1.7mmに達する。 その後の成長は、大島が1年で殻長3.2cm、2年で4.8cm、3年5.6cm、八丈島が1年で4cm、2年で6cm、3年で7cm程度。 寿命は6~7年。もっぱら海藻類を食べる。天然海域では、マクサ、オバクサ(いずれもテングサの仲間)などの紅藻類、シマオウギなどの褐藻類を食べる。人工飼育下では、アナアオサやリボンアオサなどの緑藻類をよく食べる。

資源の利用と保全

八丈島では、1980年代まで年間20tから40tの漁獲量があった。しかし、1989年に40tを漁獲した後は、1993年の1.5tまで減少した。その後いったん回復し、2tから6tで推移していたが、2003年には300kgにまで減少した。大島、新島、神津島、三宅島の各島では、八丈島ほど顕著な減少は認められていない。1992年より始まった放流事業では八丈島全体で6%から7%程度の回収率が得られており、全漁獲量の3割を放流貝が占めている。配合飼料で育成した人工ふ化種苗は殻が緑色である。天然海域への放流後は主に紅藻類を食べるので、放流後に成長した部分の殻は茶色になる。したがって、放流貝は殻頂の部分だけが緑色で周辺の殻が茶色の貝になる。これに対して、天然貝は殻全体が茶色なので識別が容易である。東京都水産試験場八丈分場では、1993年よりフクトコブシ陸上養殖技術の開発に取り組み、不稔性アナアオサ(生長の極めて速い緑藻類)を餌料とする技術を確立した。餌となる不稔性アナアオサもすべて陸上水槽で培養生産して、飼育水槽のフクトコブシに給餌し、出荷サイズまで養成する。餌が緑藻類のアナアオサなので、フクトコブシの殻は全部緑色になる。

料理法

夏が旬で、酒蒸し、刺し身、煮貝などで食べる。
配合飼料で育成したフクトコブシ
配合飼料で育成したフクトコブシ
不稔性アナアオサ
不稔性アナアオサ

フクトコブシ
フクトコブシ