イタチザメ


標準和名

イタチザメ

学名

Galeocerdo cuvier (Peron and Lesueur)

地方名

サバブカ(全国)、トラ(東京市場)

分類

メジロザメ目、メジロザメ科、イタチザメ属

形態

尾ビレは下半分が短く、上下が非対称。後方の鰓孔は胸ビレの上にあり、眼は小さい。尾柄には隆起線がある。吻は幅広くて短く、かなり丸い。第1背ビレは胸ビレ後端付近に始まる。歯はハート型の頑丈なもので、深い切痕があるのが特徴である。メジロザメ科のサメの中で、尾柄部に隆起線がある種はヨシキリザメ Prionace glauca (Linnaeus) とイタチザメの2種である。イタチザメには噴水孔があり、口の角に長いしわがあることが特徴で、この点でヨシキリザメと識別ができる。小形個体には体に垂直の縞模様があるが、大きくなると消えてしまう。成熟すると背は灰褐色の単色、腹部は濁った白色に変化する。平均的な大きさは4mから6mだが、全長8mに達することもある。

分布

熱帯および亜熱帯の周辺海域。日本では関東以南の沿岸域に生息している。表層から水深140mまでの沿岸および外洋域。一般的には日中は深層域にいて、夜間になると沿岸域に出没する。水の濁った礁湖や港湾でもしばしば見られる。

生態

魚の群や瀬、岩礁等につく。雌は10歳で成熟する。約9ヶ月の妊娠期間の後、50cmから70cmの幼魚を10匹から80匹出産する。食性は大変に貪欲で、魚類、海ガメ、甲殻類、海産ほ乳類、鳥類、は虫類、同じ種を含むサメ類などを捕食する。水深が膝くらいまでしかない浅瀬にも近寄ってくるので、馬や羊なども食べてしまう。他のサメ類よりも、その餌生物が多様である。大型魚は光をあまり好まないらしく、昼間は比較的深いところに棲む。若いサメはそれほど光を嫌わないらしく、昼間でも海の表面を泳いでいるのが観察される。昼も夜も活動するが、夜間は極めて活発に活動する。単独行動で2,500km以上の季節回遊を行う。通常はゆっくりと遊泳するが、興奮すると極めて敏速に泳ぐ。 伊豆・小笠原諸島では、アオダイやキンメダイなどの底魚漁場にしばしば出現し、漁業者の一本釣りにハリ掛かりした魚を食害する。こうした場合には、延縄などを用いて駆除を行うことがある。

資源の利用と保全

地域的には個体数も多く、現時点では個体数減少の危機にあるとは考えられていない。いわゆる人喰いザメの一種で、ホホジロザメ Carcharodon carcharias  (Linnaeus) に次いで危険なサメとされる。特に夜明けあるいは日没前の時間帯は要注意である。遊泳者に致命的な損傷を与える攻撃ぶりが記録に残されている。 サメ類というと、肉食性のどう猛な魚とのイメージがあるが、伊豆諸島の岩礁域に生息するネコザメ Heterodontus japonicus (Maclay and Macleay) やホシザメ Mustelus manazo Bleeker は性質がおとなしく、もっぱら貝類やエビ・カニ類などを食べている。

調理法

練り製品の原料とされるが、肉質は上等ではない。
漁場から駆除されたイタチザメ 漁場から駆除されたイタチザメ

漁場から駆除されたイタチザメ


ネコザメ
ネコザメ