ブダイ


標準和名

ブダイ

学名

Calotomus japonicus (Valenciennes)

地方名

アオコンブ・アオタレ・カシカメ(伊豆大島)、カシカミ(神津島、八丈島)、アカブダイ(神奈川、静岡)、イガミ(関西)、モハミ(鹿児島)、アカエラブチャー(沖縄)

分類

スズキ目、ブダイ科、ブダイ属

形態

体はやや長い長円型で、側扁する。背ビレは1基で基底は長い。尾ビレ後端は円形に近い。ウロコは大きく体側のほか頬部にもある。体色は背部が褐色で、腹部は淡黄色。雄は全体に青味が強く、雌は赤味が強い。体長40cm近くに達する。 ブダイ科魚類は、上下のアゴにやや大きな歯が並び、口の外にはみ出して見える。この様子がオウムのクチバシのようなので、英語ではパロット・フィッシュ(「オウム魚」の意味)と呼ばれる。

分布

日本の南部海域から西部太平洋、インド洋の沿岸域に分布する。東京の海域では、伊豆諸島で普通に見られるが小笠原では少ない。 ブダイ科魚類は熱帯域を中心に多くの種類がいるが、色鮮やかな体色や模様をもつものが多い。小笠原の沿岸域ではヒブダイ Scarus ghobban Forsskalがごく普通に見られ、1993年に新種として記載されたオビシメ Scarus obishime  Randall and Earleなども生息している。

生態

ブダイは沿岸の岩礁域やサンゴ礁域に生息し、雌から雄に性転換する魚である。一匹の雄を中心に何匹かの雌が集まってハーレムを作る。この雄がいなくなると、最大の雌が速やかに雄に性転換する。ブダイ類の雄と雌は体色や斑紋が著しく異なるので、昔は別種とされていた魚種もある。このように、同一種が性別によって外観が異なる現象を「性的二形」という。クジャクやキジの体色が、雌雄でまったく異なるのは有名な事例である。 産卵期は夏で、直径0.6mmほどの球形の浮性卵を産む。生後2年で体長20cm程度に成長し、成熟・産卵する。雑食性で、エビ・カニ類や海藻類を食べる。冬季は動物食性から植物食性に変化するので磯臭さが消える。

資源の利用と保全

ブダイは、身の磯臭さが抜ける冬期を中心に、伊豆諸島沿岸で刺網などにより漁獲されているが、ほとんどが地元消費されている。 伊豆大島では冬の西風が吹くと、ブダイの開きが軒先で寒風にさらされ、干物に加工される。赤や青の体色鮮やかなブダイの寒干しは、島の冬の風物詩である。本種は磯の大物釣りの対象魚としても人気があり、東京などから訪れる人が多い。したがって、観光資源としても重要な魚である。

調理法

白身魚で、身はやや水分が多いのでフライや煮付けなどに向く。とくに冬季は美味。伊豆大島では、甘塩の干物の人気が高い。
ヒブダイ
ヒブダイ
オビシメ
オビシメ