トサカノリ


標準和名

トサカノリ

学名

Meristotheca papulosa (Montagne)J.Agardh

地方名

トサカノリ・イギス(神津島)

分類

スギノリ目、ミリン科、トサカノリ属

形態

葉体は膜状であるが、やや厚く、肉のようにぶりぶりした手ざわりがする。枝はやや不規則に叉状分枝する。枝の先端の枝分かれした形が、鶏のとさかのようなのでこの名がある。老成すると体の表面にこぶのようなでこぼこがたくさんできる。藻体の高さ20cmから30cm、幅1cmから5cm。

分布

本州の太平洋沿岸中・南部、瀬戸内海、九州西岸、朝鮮半島や台湾、ポリネシア、インド洋に分布する。東京の海域では、伊豆諸島沿岸の水深5mから30mの岩盤や転石上に生育する。

生態

トサカノリは複相の四分胞子体と単相の配偶体の間で同型世代交代を行う。四分胞子体は初夏から盛夏にかけて成熟し、葉の表面に四分胞子嚢を形成し、四分胞子を放出する。四分胞子は秋から翌年の初夏にかけて生長し、雄または雌の配偶体となる。雌雄の配偶体は四分胞子体と同様に初夏から盛夏にかけて成熟し、雄性配偶体は葉の表面に精子を、雌性配偶体は葉の縁に半球状またはコブ状の嚢果を形成する。やがて精子は海中に放出され、嚢果に入り込んで受精し、細胞分裂して多くの果胞子となる。その後、果胞子は嚢果から放出されて四分胞子と同様に生長し、翌年には四分胞子体となる。

資源の利用と保全

伊豆諸島におけるトサカノリの水揚げは年間約210トンから470トンで、これは九州西岸に次ぐ生産量となっている。トサカノリの需要は年々増加しているが、年により漁場の形成場所が異なったり、生産量の変動が激しいなど資源的には不安定な要素が多い。このため、増殖、栽培技術の開発が求められている。

調理法

従来は刺身のつまとして用いられていたが、最近では海藻サラダにされることも多い。生鮮時の藻体は紅色だが、熱湯を通せばフィコビリン系の赤い色素が変成し、葉緑素が残って緑色となる。さらにこれを水にさらせば、すべての色素が溶出して白くなる。これらを乾燥させたカラフルな海藻サラダがスーパーなどで販売されている。

海中の岩上に生育するトサカノリ
海中の岩上に生育するトサカノリ


水揚げされたトサカノリ
水揚げされたトサカノリ