クロアワビ


標準和名

クロアワビ

学名

Haliotis discus discus Reeve

地方名

オガイ・オンガイ・クロガイ(伊豆諸島)

分類

古腹足目、ミミガイ科、アワビ属

形態

貝殻は平たい長円形で、「呼水孔」と呼ばれる4個から5個の穴が開いており、内面には真珠質の光沢がある。殻長15cmから20cmに達する。

分布

太平洋側は房総半島付近から九州、日本海側では北海道南部から九州にかけての、外洋性の岩礁域に分布する。東京の海域では、伊豆諸島に分布するが、利島以南では少ない。

生態

水深4mから5mを中心とした浅所に生息し、夜行性で、昼間は、岩の隙間や洞穴などの暗所に潜んでいる。藻食性で、コンブの仲間などの大型褐藻類を好む。産卵期は秋から冬にかけての、水温20℃を下回る時期。殻長10cmに成長するのに、3年から4年かかる。

アワビ類各種の特徴

伊豆諸島には、本種以外に、メガイアワビ Haliotis gigantia Gmelin 、マダカアワビ Haliotis madaka Habe の2種のアワビも分布しており、いわゆる「アワビ」とはこれらの総称である。メガイアワビは、クロアワビに比べて殻が浅く、凹凸は少ないのに対し、マダカアワビは、殻が深く、凹凸が顕著である。また生息水深は、クロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビの順に深くなり、マダカアワビは水深50m付近にまで生息する。

資源の利用と保全

伊豆諸島で漁獲されるのは、ほとんどが、クロアワビとメガイアワビで、主に素潜りによって採取される。資源保護のために、禁漁期の設定や、殻長制限、また、1992年からは、人工種苗の放流事業もおこなわれている。近年の伊豆大島における漁獲量は、1995年の約6.7トンをピークに減少傾向にあり、2000年以降は1.5トン前後で推移している。

調理法

貝類の中では最高級の部類に属し、水貝、刺身、酒蒸し、煮貝、踊り焼き、ステーキなど、様々な調理法で食される。昔は、身をたたいて薄くのした干物がアワビの「のし」として祝儀の贈り物に添えられた。現在の「のし袋」や「のし紙」の名前もこれに由来する。
水揚げされたクロアワビ
水揚げされたクロアワビ
マダカアワビ
マダカアワビ

メガイアワビ
メガイアワビ