アオウミガメ


標準和名

アオウミガメ

学名

Chelonia mydas (Linnaeus)

地方名

アオガメ・アカガメ・カメ・ウミガメ・アサヒベッコウ(以上、伊豆・小笠原諸島)

分類

カメ目、ウミガメ科、アオウミガメ属

形態

甲羅の形状は、背面から見ると前方が丸く、後方にかけてややとがった卵型をしている。甲羅の中央に5枚の椎甲板があり、その両側にそれぞれ4枚の肋甲板がある。甲板に放射状の模様があり、「アサヒベッコウ」の名前の由来となっている。背面は茶褐色から黒色まで、暗い色から明るい色まで、色彩変異に富む。4肢はオール状に変化しているが、各肢の前縁に爪が1本ある。成熟したオスでは尾部が長く、前肢の爪も長くなる。大きさは、甲長約110cm、体重約150kgになる。

甲羅(椎甲板、肋甲板)


分布

世界の熱帯、亜熱帯域に広く分布する。東京の海域では、伊豆諸島から小笠原諸島まで見られるが、産卵場はほとんど小笠原に限られる。ウミガメ類では、ほかにアカウミガメ Caretta caretta (Linnaeus) が 、主に伊豆諸島で見られる。

生態

熱帯から温帯の海域を広い範囲にわたり索餌回遊している。日本列島周辺のアオウミガメは、6月から9月にかけて、小笠原諸島に繁殖のために来遊する。1頭のメスは1シーズンに数回にわけて産卵を行う。1回に80個から150個前後の卵を、深さ40cmから50cmほどの穴の中に産む。産卵はほとんどが砂地で、まれに土の中に産むものもいる。卵の直径は約45mmで球形をしている。卵は約60日前後でふ化する。ふ化直後の子ガメの甲長は約5cm、体重は約23gで、集団で砂を掘りながら地表に上がってくる。多くは夜間、砂から脱出し海に入る。 子ガメは流れ藻などに付いて、外洋で浮遊生活を送る。稚ガメのころは動物食が強く、成長にともなって、植物食に変わる。餌は、海藻類、付着生物のほか、浮遊しているヒカリボヤやエボシガイなどの動物プランクトンを食べる。甲長30cm程度になると沿岸部で見られるようになる。とくに小笠原では、甲長30cmから40cmほどの未成熟個体が周年、沿岸付近で見られる。成熟年齢は20年から25年と推定されている。 アカウミガメは、甲羅の椎甲板が5枚で、肋甲板も5枚である。アカウミガメは亜熱帯から温帯で繁殖を行う。食性は、底棲の無脊椎動物で、肉食性が強い雑食である。

資源の利用と保全

日本では、アオウミガメを小笠原、沖縄などで食用として漁獲している。小笠原諸島の過去の漁獲統計によれば、1880年には1852頭が漁獲されているが、その後、1910年代に入り500頭前後、戦後の1950年以降は100頭ほどにまで漁獲が落ち込んでいる。これは、乱獲と産卵場の消失等が原因とされている。(旧)東京都水産試験場では、戦前よりアオウミガメの人工ふ化・放流事業を行って、資源の回復に努めてきた。また現在、漁獲頭数の制限も行われており資源は回復傾向にある。一方、世界的には海洋投棄されたビニールなどプラスチック製品を間違って飲み込み死亡するウミガメが増加する等の門題が生じている。日本では、漁の最中にウミガメが獲れたときに、縁起物として酒を振る舞って放流するなどの習慣が古くからある。

調理法

アオウミガメの内臓や肉を野菜と一緒に煮込み、塩で味付けする“カメの煮込み”は小笠原の郷土料理。肉は脂が少なくステーキなどで非常においしい。欧米では、ウミガメのスープが高級品とされており、アオウミガメの骨と腹甲を同時に煮つめると、甲板が溶けて濃厚なゼラチンが溶け出す。これに、香辛料と塩、ワインなどで味を整える。さらに冷やすと、ゼラチンがかたまって、ぷりぷりとした食感がありおいしい。
産卵に上陸したアオウミガメ
産卵に上陸したアオウミガメ
産卵に上陸したアオウミガメの足跡
産卵に上陸したアオウミガメの足跡