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波浮港の海面を覆った緑色のもや

  平成26年4月15日から16日にかけて波浮港内一帯の海面が緑色のもやで覆われました。表層水を顕微鏡で調べたところ、ミドリムシの仲間が大量増殖していた事が原因だと判明しました。

 

波浮港の海面を覆う緑色のもや

 4月15~16日に、波浮港内の海面が緑色のもやで覆われるという現象が発生しました(図1)。漁業者の方に伺っても非常に珍しい現象らしく, 原因も分からないとの事でした。そこで、大島事業所では緑のもやの原因を調査しました。

図1 波浮港海面に発生した緑のもや

図1 波浮港海面に発生した緑のもや

4月16日の様子。海表面を抹茶色のもやが帯状に漂っていました。

16日には終息に向かっていたようでしたが、前日ではより鮮やかな

緑色のもやが港一帯を覆っていました。 

 

調査方法と観察結果

 緑色のもやは表層付近を漂っていたため、バケツで表層水を採水しました。試水は2Lボトルに移した後、固定などは行わずに実験室に持ち帰り、顕微鏡を用いて観察を行いました。
 顕微鏡を覗いてみると、動物プランクトンの周囲をさらに微細な生物が漂っていました(図2-a)。倍率を上げてこの微細な生物を観察してみると2本の鞭毛と特徴的な細胞の変形運動がみられました(図2-b)。この様な細胞変形運動はユーグレナ運動と呼ばれ、ミドリムシの仲間に特徴的にみられるものでした。本種は海産ミドリムシの一種であるEutreptiella sp. と推定されました。
 富栄養化した淡水域では、ミドリムシはしばしば大発生し、アオコと呼ばれる現象を引き起こします。本種も沿岸域で大発生するプランクトンとして知られおり、やや低塩分で増殖が活発になるという報告があります。普段見られないミドリムシの大量発生が、なぜ今回起きたのかという原因については不明ですが、14日の降雨により波浮港内の表層塩分が下がった事に加え、淡水流入による栄養塩の供給、15日以降の天気の回復や水温上昇が大量発生の一因と考えられました。

図2 顕微鏡を覗いてみた結果

図2 顕微鏡を覗いてみた結果

a) ヤコウチュウの周囲を漂うEutrepitella sp.。

b) Eutrepitella sp.の拡大図。ユーグレナ運動のために細胞の形は様々。