平成12年9月20日 東京都水産試験場 大島分場

(1)南方のキンメダイ漁場を探る

「みやこ」小笠原海域漁業調査

 調査指導船「みやこ」(136t)は平成12年6月21日から7月10日の間、小笠原東側の底魚漁場の調査と、小笠原西方の水深500から800mの漁場調査を行いました(図1)。東方の漁場調査では4日間の調査でハマダイ(図2)等、19種286尾を漁獲しました。また、西方海域の調査では大型魚種を目的とする漁具と、従来の底魚を対象にする漁具と2種類の漁法により調査を実施しました。大型魚用漁具ではヨシキリザメがみられただけで、期待された魚類・頭足類とも漁獲されませんでしたが、底魚を対象とする調査では、これまで小笠原の漁業者の方々があまり利用されていないキンメダイを漁獲することができました。

図1 調査海域
図1 調査海域


図2 ハマダイ(左)と近縁のオオクチハマダイ

図2 ハマダイ(左)と近縁のオオクチハマダイ
(Etelis coruscans Valenciennes :Etelis radiosus Anderson)


このキンメダイの大きさは、平均尾叉長35.67cm、平均体重1024.8gで、生殖腺の発達状態をみると、発達過程にあるものが多く、産卵期前であると考えられました。また、本場資源管理部での耳石による年齢解析では、全体の約半数を7歳魚が占めていることがわかりました。水産試験場ではこの成果を小笠原水産センターを通じて小笠原の漁業者の方々へ報告しました。これまであまり利用されていなかった資源を利用し漁獲圧の分散を図ることは、小笠原の漁業資源保護にとって必要であり、これからも、このような調査を通じて、小笠原の漁業振興に協力してまいります。
(担当:調査指導船「みやこ」、資源生態科)


(2)標識イサキ再捕される!

 大島分場では、満1歳になったイサキを今年の7月25日、黄色のスパゲティータグ(TK-071-245)標識を付けて大島南東側で放流しました。このイサキが放流から約1ヶ月後の8月29日に、放流した場所の近くで元町漁協所属の「一丸」により再捕されました。標識の付いたイサキを釣られた方は水産試験場大島分場までご連絡下さい(粗品を進呈いたします)。
(資源生態科)


採捕されたイサキ

採捕されたイサキ
(Parapristipoma trilineatum)


(3)伊豆諸島噴火・地震災害調査

 水産試験場では、今回の災害発生後、被害を受けた磯根漁場の潜水調査を地元漁協と協力して行っています。大島分場では、9月6日に新島の若郷地区(写真1:コワット漁場、若郷漁協研究会長の藤原氏が同行)と本村地区(写真2:アジア磯、落石で埋まった転石帯)で潜水調査を行いました。詳細な調査結果はホームページ(www.ifarc.metro.tokyo.jp/)上で公開しています。三宅島の皆さんの帰島、被害に遭われた島民・漁業者の皆さんの一刻も早い災害からの復興をお祈りしております。
(調査指導船「かもめ」、栽培漁業科)


写真1 コワット漁場
写真1 コワット漁場

写真2 アジア磯
写真2 アジア磯