平成11年12月1日 東京都水産試験場 大島分場発行

(1)人工サザエどうして見分ける?

 栽培漁業の更なる発展をめざし来年度から、伊豆諸島北部海域においてサザエ(Batillus cornutus)放流が本格的に始まります。このため、現在、水産試験場では大島、利島、新島、神津島の各漁場へ試験放流したサザエを追跡し、その後の生残や成長などを精力的に調べています。
 ところで、皆さんは天然サザエと人工サザエをどう見分けるかご存知ですか?アワビやトコブシを配合飼料で飼育すると殻がグリーンになります。これは栄養的な欠陥ではなく、単に餌に含まれる色素によって生じる現象です。鮮やかなグリーンマークは、放流後も長期間殻頂部に残るので、直ぐ、誰にでも判別でき放流効果を判定するのに大変有利です。一方、サザエの場合には配合飼料で飼育すると殻の色は、グリーンではなくホワイトになります。


回収貝(左:天然貝 右:人工貝) 研磨作業風景

回収貝
(左:天然貝 右:人工貝)

研磨作業風景


 放流直後であればこのホワイトは、よく見えて、調査に都合が良いのですが、サザエは生活場所がアワビ類と異なり、岩の上であるため1年も経つと殻の表面に海藻(石灰藻)やフジツボなどが固着し、覆われて見えなくなります。このため放流後1年以上経過したサザエのルーツ(人工か?天然か?)を判別するためには採取した貝の殻頂部を1個ずつ研磨する作業が必要です。
 各島の漁場で採集するサザエは個数も多いため、研磨作業には大型の研磨機を使用しています。多いときには一度に500個体以上を磨くため、職員にとっても、生きているサザエにとっても大きな負担です。地味で根気のいる作業ですが、サザエの放流効果を判定するためには欠かせない作業です。島しよの栽培漁業の発展を願って毎日奮闘しています。
(担当:栽培漁業科、調査指導船「かもめ」)


(2)計量魚探でタカベを量る

  水産試験場では将来にわたりタカベ漁業が安定して継続できるよう、同種に関する資源調査を行っています。現在、本場資源管理部と力を合わせ、鱗や耳石による年齢査定、各漁協の水揚げ伝票に基づく資源量推定、卵稚仔魚の分布や生態調査を実施しています。今年からは計量魚探(計量用魚群探知機)を用いての現存量調査が加わりました。耳慣れない名称ですが、探知した魚群の量を数値で表す測定機で、近年急速に進歩し、欧米ではタラ類などの資源管理に応用されています。


タカベ

タカベ
(Labracoglossa argentiventris Peters)


 下の図は本年8月18日に、神津島のオンバセ東側、建切網漁業が行われていたすぐそばの水深30mほどの漁場で魚群を調査した時の画像の一部です。画像中心付近を通っている濃い帯が海底で、その上方に赤から緑色の魚群反応が海底から5mほどの厚さでいくつか認められます。解析の結果、魚群密度は最大で12尾/m3程度と算出できました。ちなみにこの日の建切網による水揚げは3.4トンで、うちタカベは3.2トンでした。
 探知された魚種の識別や統計処理など(今後解決しなければいけない問題点は多いのですが、実用化できれば計量魚探を搭載した調査船が航走するだけで魚群の大きさがわかり、リアルタイムに資源量を把握できるなど、資源管理を進める上で大きな期待が寄せられています。
(担当:資源生態科、調査指導船「やしお」、「みやこ」)