平成14年3月14日 東京都水産試験場 大島分場

1. 神津島・新島で調査研究成果の報告会実施!

 水産試験場では、平成13年度に実施した試験・研究結果の一部について、神津島及び新島で報告会を実施しました。忙しい中、神津島では熱心な漁業者・漁協関係者ら33名が、新島では18名が出席し、発表後も予定時間を超える活発な質疑が行われました(写真1)。なかでも「サザエ禁漁期間中の蓄養について」の関心が高かったので、ご紹介します。


写真1 神津島での報告会

写真1 神津島での報告会


表1 発表内容

表1 発表内容


2. 夏にサザエを出荷できる?

 サザエの浜値が高く、需要が高い時期は夏場と年末ですが、夏場(7月から8月)はサザエの繁殖期のため、都の漁業調整規則では禁漁となっています。しかし、各島から「夏の観光客に地元のサザエを提供したい」という強い要望があります。このため、大島分場では禁漁前に漁獲したサザエを禁漁期間中に蓄養して出荷できるよう、試験を行ったので報告いたします。 試験期間は2001年 7月13日から9月1日(計55日間)で供試貝として大島波浮漁協で入手した銘柄「ヒメ」(体重100g以下)を使用しました。
 試験の結果、ワカメあるいはテングサ・アントクメ(ヒロメ)を少なくともサザエ総重量の1から2%程度を与えることで、蓄養期間中の重量減少を抑え、生残率も高いことがわかりました。ワカメはコストがかかるため、海藻(テングサ・アントクメ)の利用が望まれます(図1)。


図1 畜養試験結果

図1 畜養試験結果


3. 資源管理で持続・安定したサザエ漁業を!

 近年、全国的にサザエの水揚量は減少傾向にありますが、大島でも昨年、対前年比で約半分程度にまで落ち込み(図2)、大きさも小型化し、資源量の減少が心配されます。一方、大島以外の島では水揚量が順調に増加しています。その要因の一つとして、将来を見据え取り組んできた「資源管理」が考えられます。利島では体重180g以下、新島では体重100g以下、神津島でも110g以下は全て自主的に放流しています。何れも都の漁業調整規則(殻高5cm以下は放流)より遙かに大きいサイズを「自主規制サイズ」としています。
 大島分場での研究の結果、大島のサザエは3才から産卵に加わることが明らかになっています。このため、全ての個体が必ず1度は産卵を経験するには目安として、大島では殻高75mm(体重約100g)以上に成長してから漁獲することが望ましく、利島を始めとする自主規制サイズは資源管理上、好ましいことがわかりました。一度も産卵しないうちに捕まえることは、貯金に例えれば、どんどん「元金を取り崩し」ている状態で、その状態が続けば利子どころか元金が減り続ける、つまり資源量は減少の一途をたどると推測されます。(栽培漁業科)


図2 近年のサザエ水揚げ量の推移

図2 近年のサザエ水揚げ量の推移


<キーワード>漁業調整規則:漁業に関する法令とあいまって、水産資源の保護培養・漁業取締その他の漁業調整を図り、漁業秩序を確立するものです。国の指導のもと、各自治体で制定しています。