平成11年 7月26日 東京都水産試験場 大島分場発行

(1)黒潮はN型基調で経過し、秋には蛇行

 平成11年7月14、15日に中央水産研究所において漁海況予報会議が開催され、7から12月の海況予測が発表されましたのでお知らせします。


海況予測(99年7から12月)

 黒潮は期間前半にはN型基調で推移し、10月以降にB型を径てC型流路となる。


図1 黒潮流路のタイプ

図1 黒潮流路のタイプ


予測の根拠

 伊豆諸島海域における黒潮流路の蛇行は、ほとんどの場合、宮崎県都井岬南東沖で発生した小蛇行が遠州灘沖にまで達する期間は、A型では4から6ヶ月、B・C型では3から4ヶ月であることが知られています。最近の研究によれば、6から8月の都井岬沖での黒潮の離岸距離が90マイルを越えるとA型、それ以下ではB・C型になる可能性が高いことがわかってきました。
 7月上旬現在、都井岬南東沖においては黒潮が離岸してます。この離岸の発達により小蛇行が形成され、伊豆諸島海域での黒潮は秋から冬に蛇行(B型、C型流路)が予測されます。また、大蛇行(A型流路)となる可能性もありますが、現在のところ、この離岸が発達中のため、状況がわかり次第、皆様にご報告したいと思います。なお、海況の変化によって漁模様も大きく変わりますので、今後の「一都三県漁海況速報」にご注意下さい。


(2)サザエの産卵期を制御する

 大島でのサザエの産卵期は7から9月頃で、種苗生産のための産卵誘発もこの時期に行っています。もっと早い時期に採卵できれば、放流までに成長の良い夏を2回過ごさせることができ、元気で大きな種苗を効率良く育てることが可能となります。大島分場では昨年12月に採集したサザエの親貝を水温(加温)と日照時間(電照)を調節して5月の時点で7月の環境と同じになるように飼育しました。これらに対し、5月24日、6月14日、21日の3回の産卵誘発を行ったところ、表1のような結果となりました。

表1 産卵誘発結果

月日

供試個数

反応個数

採卵数

受精率

5月24日

99

♂34・♀1

未計数

94.0%

6月14日

97

♂31・♀9

97万8千

95.4%

6月21日

96

♂49・♀27

368万2千

79.7%


 通常よりも1ヶ月早く採卵できた半面、採卵数、受精率ともに満足できる数値ではありません。しかし生残稚貝は順調に発育していることから、今後さらに加温・電照条件を検討すれば制御することは可能と考えられます。


生後1ヶ月の稚貝(約2mm)

生後1ヶ月の稚貝(約2mm)