平成12年1月1日 東京都水産試験場 大島分場発行

(1)黒潮はC型流路で経過し、春先にはN型流路へ?

平成11年12月14、15日に高知県高知市において漁海況予報会議が開催され、平成12年1月から6月の海況予測が発表されましたのでお知らせします。


海況予測(2000年1から6月)

 黒潮はC型流路、期半ばにはC型流路が維持され、その後N型基調で推移する。

図1 黒潮流路のタイプ

図1 黒潮流路のタイプ


予測の根拠

 伊豆諸島海域における黒潮流路の蛇行は、ほとんどの場合、宮崎県都井岬南東沖で発生した小蛇行が遠州灘沖まで東進、発達することにより形成されますが、12月上旬現在、都井岬南東沖における目立った離岸現象は確認されていません。また、1999年7から12月の黒潮の流路変動は、1992年12月から1993年4月の流路変動傾向に類似していることが確認されました。このような特徴から「黒潮は基本的にC型流路をとる。C型流路は通常2から3ケ月程度継続し、今期後半に房総沖でD型流路に変動した後、N型基調で推移する」という予測を行いました。現在のところ、6ヶ月間の予測を提示していますが、海況状況に変化があった場合、改めて最新の情報を皆様にご報告したいと思います。なお、海況の変化によって漁模様も大きく変わるので、今後の「一都三県漁海況速報」にご注意下さい。(担当:海洋環境科)


(2)がんばれ!島の定置網漁業

  伊豆諸島は急峻な海底地形のうえ、黒潮の影響で潮が速く定置網漁業には不向きと言われていました。昭和50年代に入り・中・底層網という水面下に沈める定置網の導入により大島から御蔵島の各島で設置されましたが、現在では大島・新島に各1カ所、三宅島に2カ所で操業されています。いずれも小型定置網で、漁協が経営しています。
 大島は南東側に波浮漁場があり、3から4月にブリ、5から7月にイサキ、ケンサキイカ、マアジがまとまって漁獲されます。特に昨年(平成11年)のブリは10Kgを越える大型魚が主体で、網起こしも勇壮でした。
 新島は西側に地内島漁場があり、5から7月にケンサキイカやマアジ、秋口にカンパチがまとまって獲れます。昨年は4から8月にケンサキイカが21.6トンと多く獲れました。


網起こし作業(新島)

網起こし作業(新島)


 三宅島は北西側に伊ケ谷漁場、南西側に阿古漁場があります。三宅島の定置網の特徴はクサヤの原料になるムロアジ類(モロ、クサヤモロ等)が4から10月に多く漁獲され、平成9年では年間漁獲量の45%を占めています。また、5から6月にはヒラマサがまとまって漁獲されます。このように、高級魚がまとまって漁獲されるため、島の漁業にとっては重要な存在になっています。定置網漁業は漁船漁業と異なり、魚群を追うのではなく、魚の回遊経路を知り、通り道に網を設置する「待ちの漁業」です。そのため定置網の豊・不漁は魚の回遊経路を左右する海況変化と大きな関係があります。水産試験場では、特に黒潮流路と定置網の漁獲特性との関連を分析し、伊豆諸島の定置網漁業を応援していきたいと考えております。(担当:海洋環境科)