平成20年10月30日 東京都島しょ農林水産総合センター大島事業所発行

                   大島事業所トピックNo.326.pdf [291KB pdfファイル]  

テングサ藻場再生・保全対策の最前線(大島編) 

  テングサは伊豆諸島の重要な水産資源ですが、漁場の荒廃等で漁獲量は減少しています。島しょ農林水産総合センターでは、平成17~19年度実施した「漁場の荒廃・海の異変対策」の成果をふまえ、平成20年度から3年間の計画で、大島、三宅島、八丈島においてテングサ藻場を再生・保全するための研究を開始しました。本トピックでは、大島での取組を紹介します。

島の北西側漁場で進むテングサ藻場の荒廃

 万立から泉浜にかけた沿岸域では、白くなった岩や岩盤が多くみられます。これらは、硬い石灰質を形成する有節石灰藻という海藻に被われたもので、有用なテングサ等の海藻はみられません。
 本研究では、このような有節石灰藻等に被われた漁場をテングサ藻場に再生するための技術開発を目的に開始されました。

写真1 有節石灰藻に被われた岩

 

チェーン振りで雑海藻を除去

 有節石灰藻に被われた海底にテングサを生やすのは大変難しいことです。本研究では、海底地形の特徴から図1に示した「チェーン振り」による手法を導入し、泉浜で雑藻を除去する試験を行いました。

 

図1 チェーン振り模式図

 

種の添加にスポアバッグ手法を導入

 チェーン振りで新しく作り出した裸地に10月22日、胞子をもったテングサ母藻を袋に詰めたスポアバッグを投入しました(写真-2)。テングサの成熟については、これまでの調査で10月~1月が成熟期と推定されています。今後、追跡調査を行い、周辺漁場での再生状況を把握していきます。

写真2 海底に投入したスポアバッグ

産・学・公連携で研究を推進

 本研究は、漁業協同組合、首都大学東京、大島町の産・学・公連携で取り組んでいます。関係機関と連携して追跡調査、更なる技術開発を行い、テングサ藻場の再生技術の確立を目指していきます。