平成13年4月9日 東京都水産試験場 大島分場

噴火地震災害の漁獲への影響(2)

 平成12年6月26日の三宅島雄山の火山活動から始まった噴火地震災害は、9月1日から3日に三宅島全島民が島外に避難する事態になり、利島から御蔵島の各島も29回に及ぶ震度5弱以上の地震に襲われました。分場だよりNo.283号で平成12年7月から9月の漁獲動向をお知らせしましたが、今回は9月以降12月までの 漁獲量も含めて前年同期と比べて噴火地震災害の影響をまとめました。


1.平成12年7から12月漁獲量の対前年比

 調査の漁獲対象は、沿岸性魚類としてケンサキイカ、タカベ、イサキを、深場の底魚類としてキンメダイ、ムツ、メダイを代表種として集計しました。平成12年7から12月期に、大島から三宅島各島で水揚げされた6種類の漁獲量と対前年比は図1のとおりです


図1 漁獲量の対前年比(H12年7から12月)

図1 漁獲量の対前年比(H12年7から12月)


2.平成12年漁期中の対前年比

(1)沿岸性魚類3種の漁獲量は、いずれも11年同期のほぼ半分でした。ケンサキイカは昨年比30.8%であり、12年全漁期(3から8月)の総計は79トンでした。11年の130トンには及ばないものの、10年の59トンを上回りました。式根島の一夜一隻平均漁獲量は24kgと昨年並みであったことから、出漁日数減がなければ100トンを超す漁況であったと思われます。タカベは61.6%でした。式根島刺網漁の一日平均漁獲量が140kgと昨年を上回りましたが、若郷の寄網漁、神津島の建切網と三宅島の刺網漁の操業日数が減少したため、年間の合計は155トンと、不漁だった11年の179トンをさらに下回りました。イサキは7から12月の漁獲量は11年の38.1%に止まり、年間の合計は69トンと好漁年だった11年の152トンの半分以下となりました。
(2)底魚類の7から12月の漁獲量11年の漁獲量を大きく上回りました。これは11年8から9月に黒潮が列島線上を北上し、潮流が早く底釣りに適さない海況であったためです。キンメダイは昨年比271.5%の90トンで各島とも11年より大きく増加しました。資源が下向き傾向にあるなか、各島漁業者の漁獲努力量が多かったと思われます。ムツ、メダイの漁獲量はそれぞれ35、58トンで、新島、式根島、神津島の漁獲量が増加しました。
(3)磯根資源を見ると、7から12月期の漁獲量対前年比は、サザエが76%、アワビが135%、トコブシが202%、イセエビが112%、トサカノリが127%、テングサが19%となりました。火山灰、崖の崩落による土砂の流入の影響を直接受けたテングサは昨年の2割に満たない大不漁となりました。サザエは主要産地の大島で漁獲量が減少したため全体で昨年の76%に止まりましたが、その他の種は災害を受けているにもかかわらず、漁業関係者の大変な努力により全体に不漁であった昨年を上回る結果となりました。
(担当:海洋環境科)


三宅島近影(平成13年3月20日調査船より撮影)

三宅島近影(平成13年3月20日調査船より撮影)