平成13年5月16日 東京都水産試験場 大島分場

1.「みやこ」「やしお」による、サメ被害調査

 サメ類の資源動向については、国際的に関心が高くなっているところですが、漁業の現場では操業中の漁獲物や漁具に被害が多く、漁業関係者の悩みの種となっているのも現状です。さて、大島分場では2月5日から9日にかけて、調査指導船「みやこ」、「やしお」により、大島・波浮沖キンメダイ漁場のサメ被害調査を行いました。
 この漁場では、キンメダイが年間通して漁獲でき、価格も安定しているため、多くの漁船が底釣り漁を行っていますが、 ネズミザメ*1(学名 Lamna ditropis )や アオザメ*2(学名 Isurus oxyrinchus )などのサメ類が回遊してくると、掛かった魚を食べられたり、漁具を切られるといった被害が多くなります。波浮港漁協からの要請を受けて行われたこの調査では、小型の延縄を使い、延べ6回の調査で、ネズミザメ12尾、アオザメ3尾を釣獲しました(表1)。1回の延縄操業(釣り針25本)で、全長2m前後のサメが6尾揚がった時もあり、多数のサメが漁場へ回遊していることが推測されました。
 水産試験場では、このような漁業被害調査を通して、サメ類の資源生態に関する知見を積み重ねて行きたいとたいと考えています。
(担当:海洋環境科、調査指導船「みやこ」、「やしお」)


揚縄作業(やしお)

揚縄作業(やしお)


表1 サメ被害調査結果

表1 サメ被害調査結果


*1:「モウカザメ」とも呼ばれ、ベーリング海、北太平洋など、寒帯から温帯の沿岸から外洋まで広く分布。日本では九州・四国以北でみられる。フカヒレの原料の他、ステーキにもする。全長3mになる。
*2:世界中の熱帯から温帯の沿岸から外洋まで広く分布するサメで、日本では太平洋側や東シナ海に多い。フカヒレの原料の他、ステーキにもする。全長4mになる。


2.標識放流キンメダイ再捕される!

 平成13年3月23日、「みやこ」により標識放流したキンメダイが宜丸(千葉県鋸南町勝山漁協所属)により再捕され、千葉県水産試験場を通して報告をいただきました。このキンメダイは約50日前の2月1日に第2大野原海丘付近で標識放流された50尾のうちの1尾で、その時の尾叉長は232cmでした。そこから東へ約5海里の第1大野原海丘付近で再捕されました。今後も標識放流を行って参りますのでご理解、ご協力のほど宜しくお願いいたします。
(担当:資源生態科、調査指導船「みやこ」)


回収された標識(黄緑TK-651)

回収された標識(黄緑TK-651)


今年もハマトビウオ人工採卵成功!

 平成13年4月27日の夜間、御蔵島周辺で調査指導船「みやこ」船上において、タモ抄いにより獲られたハマトビウオから人工受精卵を得ることができました。ハマトビウオについては今年から数量目標による資源管理が始まりました。水産試験場では、より精度の高い資源量の把握に努めているところですが、今年の八丈島周辺のハマトビウオ漁は近年にない好漁で、5月6日までの集計ですでに30万尾を漁獲しています。このような飼育試験を通してハマトビウオの成長や寿命などの研究しています。


採卵15日目の卵

採卵15日目の卵


船上での人工採卵作業
船上での人工採卵作業

特殊植毛体に付着したハマトビウオ卵
特殊植毛体に付着した
ハマトビウオ卵