平成11年11月2日 東京都水産試験場 大島分場発行

(1)イサキの採卵、飼育に成功!

 イサキは伊豆諸島では神津島以北の沿岸岩礁域に普通に見られ、成長すると体長40cmほどになる魚で、寄網や釣りによって漁獲される水産上重要な魚種です。水産試験場ではイサキの資源調査を行っていますが、初期生態や移動生態など明らかにされていません。そこで、今回、それらの生態を把握するために標識放流用の種苗を生産しました。
 昨年、釣獲した親魚を分場内のコンクリート水槽で飼育していたところ、6月7日に産卵が始まり、8月中頃まで続きました。産卵時刻は夜8から10時頃でした。採卵は6月10日と28日の2回行い、翌日の朝には全長1.5mmほどの仔魚がふ化しました。ふ化直後は、まだ自分で泳ぐことも、餌を捕ることもてきず、水面を漂っていますが、3日ほどすると口が開き餌を食べ始めます。ふ化後20日ほどすると全長約7mmになり各ひれが発達し、泳ぎ回るようになります。ふ化後1ケ月ほどでイサキ幼魚独特の縞模様が現れ、ふ化後4ケ月の10月下旬には全長は10cmを越え、親と変わらない姿に成長しました。
(担当:資源生態科、調査指導船「かもめ」)


卵径0.85mm

ふ化後1日、全長2.8mm

卵径0.85mm

ふ化後1日、全長2.8mm


ふ化後18日、全長9.0mm

ふ化後18日、全長9.0mm


ふ化後120日、全長110mm

ふ化後120日、全長110mm


(2)大島と神津島でイサキを1万尾放流!

 種苗生産したイサキの幼魚(全長約11cm)に標識(リボンタグ)を付けて神津島と大島で放流しました。
 神津島では、10月14日に神津島小学校の5年生が多幸湾内で300尾、翌15日には漁業者が思馳島周辺に約2,700尾のイサキにピンク色のリボンタグを付けて放流しました。
 大島では、10月8日に「かもめ」がカキハラで約2,700尾、10月19日に波浮港内で大島波浮小学校全校児童により600尾のイサキに黄色のリボンタグを付けて放流しました。

大島と神津島でイサキを1万尾放流

  今後、11月上旬にも、神津島、大島それぞれで約2,000尾、約1,700尾を放流する予定です。
 放流したイサキが成長とともにどのような移動をするか、結果が楽しみです。イサキの資源を守り育てるために、漁業者をはじめとする地域の皆様方のご協力をお願いいたします。
(担当:資源生態科、調査指導船「みやこ」・「かもめ」)


放流直後のイサキ(カキハラ)

放流直後のイサキ(カキハラ)

 上の写真のようなピンク色もしくは黄色のリボンタグをつけたイサキを捕まえた場合は、捕まえた日時、場所、魚体の大きさ(尾叉長、体重)を水産試験場大島分場までご連絡ください。