平成14年2月14日 東京都水産試験場 大島分場

1. 三宅島周辺海域への火山灰の影響「やしお」による濁度調査

1. 細かい火山灰は海水中で浮いています。

 三宅島雄山は2000年7月から8月に繰り返し大規模な噴火をおこし、その火山灰は三宅島とその周辺海域に大量に降り注ぎました。また、その後の降雨により島に積もっていた火山灰が周辺海域に流入し続けています。噴火から2ヶ月から3ヶ月後の2000年10月から11月に東京水産大学の「海鷹丸」が同島の伊豆沖と三池沖水深200m海域の、60mから90m層に濁りの強い海水があることを発見しました。この濁りの粒子は大部分が無機質だったことから、三宅島の火山灰であると判断されました。しかし、その実態については不明な点が多く生物への影響を知るためにさらに調査する必要がありました。そこで、当分場では調査指導船「やしお」を用い2001年8月27日から28日に東京水産大学と協力して、三宅島周辺浅海域の火山灰による濁りの実態調査を行いました。


2. 沖合の水産生物に影響は無さそうです。

 初日の27日は三宅島の周辺水深26から50mの13測点で濁度などを測定し、採水を行いました。この結果、島の南部に位置する新鼻沖と北部のミノワからアノウ崎沖に濁りの強い海水が見つかりました。そこで、翌日は調査範囲を、ミノワからアノウ崎沖水深20mから70mの海域に絞り込み扇状に12測点を設置して行った結果、いずれも沖合500mから1000m海域を中心に濁りの強い海水が円柱状に分布していました(図1)。深さ毎に見ると、表面で濁りが強かった測点の下層に最も濁った海水があったことから、海に流れ出した火山灰は真っ直ぐに沖に進み、細かな浮遊粒子は水深40mから80mの密度躍層※で浮遊し、大きな粒子はさらに拡がりながら沈殿している様子が伺えました(図2)。しかし、今回最も濁りの強かったミノワ沖測点でも透明度は20m以上で濁りを肉眼では識別できない程度です。従って特に生物に影響を及ぼす濁りとは考えられません。なお、三宅島周辺海域の濁りの実態調査は、東京水産大学プロジェクト研究の一環として行われており、今年春から夏にさらに調査を行う予定です。


図1 高濁度海域の濁度鉛直断面分布

図1 高濁度海域の濁度鉛直断面分布


3. 磯根漁場へ堆積した火山灰の動きが重要です。

 今回の調査により、沖合では火山灰による生物への影響はそれほど大きいものと考えられませんでした。しかし、テングサ・トサカノリ・トコブシなど、磯根資源に対しては堆積した火山灰の動向が悪影響を与えていることが心配されます。磯根資源の回復状況については、水産試験場が潜水調査により追跡調査を引き続き行ってまいります。
(海洋環境科、調査指導船「やしお」)


図2 高濁度水の拡散模式

図2 高濁度水の拡散模式


2. 芽が出た波浮のヒロメ

 大島では平成10年頃から南部の一部地域を除いて、サザエ、アワビの餌として重要な海藻であるヒロメ(和名アントクメ )を見ることが出来なくなりました。水産試験場では、波浮港の避難桟橋周辺で昨年11月より毎月1回、ヒロメの観察調査を行っています。11月の調査ではヒロメの新芽を確認できませんでしたが、1月の調査では葉の長さが2cmほどの新芽(写真1)を確認することが出来ました。今後も、大島のヒロメ復活を目指して調査を継続していく予定です。
(栽培漁業科、調査指導船「かもめ」)


写真1 2002年1月24日撮影

写真1 2002年1月24日撮影