平成12年2月3日 東京都水産試験場 大島分場

1) どれ位とれてるの?キンメダイ

一部三県(東京都、千葉県、神奈川県、静岡県)におけるキンメダイの漁獲量は1984年の約1万トンをピークに減少傾向で、近年約4千トンで推移し、資源量の減少が懸念されています。伊豆諸島周辺のキンメダイ漁業は各県(入会)で行われており、同海域では全体の漁獲量の約7割が漁獲されています。

キンメダイ
キンメダイ
(Beryx splendens Lowe)


1都3県におけるキンメダイ漁獲量
1都3県におけるキンメダイ漁獲量


東京都におけるキンメダイ漁獲量
東京都におけるキンメダイ漁獲量


2) キンメダイの謎を探る!

(1) どこに行くの?キンメダイ(標識放流調査)

 これまでに三宅島、八丈島周辺海域でのキンメダイ標識放流はほとんど行われていません。水産試験場では、キンメダイ資源管理のデーターを収集するため、三宅島漁業組合員と協力して、標識放流を行っています。操業中に釣り上げられたキンメダイに標識を打ち、その魚体長と放流場所、日時などを記入します。再びそのキンメダイが漁獲されれば、その間の移動や成長、分布などの生態が明らかになります。


キンメダイ卵(約1mm)

キンメダイ卵(約1mm)


(2) 卵は見つかった!稚魚は?

 昨年、調査指導船「みやこ」は大量のキンメダイ卵(約3万粒)の採集に成功しましたも大島分場では今年度も沖合定線調査(大島から八丈島、5定点)において、表面曳きによるキンメダイの卵稚仔調査を6から9月に行いました。この結果、7から9月の4の調査で計3,337粒のキンメダイ卵を採集しました。昨年ほどの大量採集はなかったものの、今回の採集結果からも産卵期である夏期には伊豆諸島海域の表層に大量の卵が浮遊していることが確認できました。しかし、仔魚の採集例は非常に少なく、稚魚にいたっては全く採れていません。今後の課題は、遊泳力を持った稚魚が広い海のどこに分布しているのかを調べることです。不明なことの多いキンメダイの生活史が徐々に解明されれば、伊豆諸島における適切な資源管理を行う上で、精度の向上が期待できます。


キンメダイ仔魚

キンメダイ仔魚



(3) 豊かな海を目指して!

 現在、伊豆諸島におけるキンメダイの資源管理は、一都三県の一本釣り漁業者の方々により自主的な管理が行われています。平成11年には伊豆諸島で操業する一本釣り漁業者は、産卵期である8月に16日間の自主規制に取り組みました。今回の親魚保護にかかる取り組みは、これまで粘り強く交渉していた東京都の漁業関係者の方々の努力に加え、水産試験場の調査結果が反映されたものです。
 水産試験場では、今後もキンメダイ資源・生態の解明や漁業秩序の維持に努め、豊かな海づくりのお手伝いを進めてまいります。


 キンメダイの研究成果については、1月28日に東京都農林水産技術成果発表会において発表しました。(印刷物:農林水産技術主要成果選集)。


(担当:資源生態科、調査指導船「みやこ」・「やしお」)