平成13年9月20日 東京都水産試験場 大島分場

(1)震災の影響残る神津島磯根漁場

 昨年の地震発生以降4回目の潜水調査を7月18日から19日に実施しましたので(図1参照)、ご報告致します。

  1. 「三浦湾」:岩の表面には砂礫や浮泥が多く堆積していましたが、トサカノリ一株あたりの繁茂状況は良好でした。
  2. 「長根浜」:水深3m以浅では岩が石灰藻と雑草で覆われ、転石は埋没していました。テングサは草長が短く、表面に石灰藻が付着しているものが多く見られました。
  3. 「白島」:流入土砂で透明度が非常に悪く、水深3m以浅は視界がゼロでした。岩の表面には砂礫が堆積し、海藻類はヤハズグサが優占し、トサカノリ・テングサは見られませんでした。
  4. 「ハシルマ」:水深約6m以浅では、岩の表面や側面に依然として細かい泥が堆積し、陸上からの土砂流入が続いていると推測され、トサカノリ・テングサ等の胞子着生への影響が懸念されます。トサカノリは岩の頂部に散見でき、5月に比べ成長は良好でした。一方、テングサは見られませんでした。
  5. 「長浜」:前回5月に比べ、トサカノリは少ないが草長が伸び、1株あたりの繁茂状況は良好でした。また、大規模な石灰藻群落が広域で見られ、テングサは確認できませんでした。適当な転石を反転したところ、トコブシ成貝を多数確認できました。

今後も陸上からの土砂流入による海藻への悪影響が懸念されるので、調査を継続していく予定です。

(栽培漁業科、調査指導船「かもめ」)
 詳細は「神津島地震災害漁場調査7」


図1 調査地点

図1 調査地点
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写真1 採集したトサカノリ

写真1 採集したトサカノリ

写真2 転石上のトコブシ

写真2 転石上のトコブシ


(2)三宅島浅海漁場の濁度調査

 三宅島雄山の噴火による大量の火山灰は、今後もかなりの量が海に流入すると推定されます。流入した微少な粒子は浅海域で浮遊、沈殿を繰り返しながら、徐々に外洋に拡散して行くと考えられますが、その動向は、まだ詳細に把握できていません。濁りの強い水塊は光を妨げて海藻類の生育を遅らせたり、魚類の行動を制限するなどの影響を与えます。水産試験場では東京水産大学海洋環境学科と協同して、8月27日・28日に調査指導船「やしお」で三宅島周辺24測点の透明度、濁度、クロロフィルα量の調査と採水を実施しました。詳細な結果は現在取りまとめ中です。
(海洋環境科、調査指導船「やしお」)


写真3 採水調査(調査指導船やしお)

写真3 採水調査(調査指導船やしお)


写真4 蛍光光度計

写真4 蛍光光度計

写真5 濁度計

写真5 濁度計


(3)イサキ稚魚の標識放流を目指して!

 水産試験場では、イサキの移動・生態を解明するため10月に大島・新島・神津島で各2000尾ずつの標識放流を予定しています。放流に当たっては地域の皆様方にご協力をお願いする計画です。放流後は、皆さんからの再捕に関する情報をお願いします。
(資源生態科)


写真6 水槽内を元気に泳ぐイサキ稚魚

写真6 水槽内を元気に泳ぐイサキ稚魚