平成13年12月17日 東京都水産試験場 大島分場

1.キンメダイはどこへ行く?標識放流のお話

 水産試験場ではキンメダイがどこで産まれ、どこで育って、どこを移動しているのかを調べるためのひとつとして標識放流を行っています。キンメダイの生態、特に生活史を明らかにすることは、限られた数のキンメダイから、どれくらいの量を獲っても十分な子孫が残り、漁業を長く続けていけるか(資源管理)を考えるうえで、とても重要な情報となります。標識放流調査は主に調査指導船「みやこ」で行っています。釣れたキンメダイのうち、元気のよい魚に標識をつけ、その魚体長と場所、日時等を記録し、放流します。再びそのキンメダイが漁獲されれば、その間の移動や成長、分布等がわかります。


写真1 再捕されたキンメダイ

写真1 再捕されたキンメダイ


 平成12年から現在まで、調査指導船と三宅島漁船により、約700尾のキンメダイを標識放流しました。そのうちの2尾が、平成13年3月と10月にそれぞれ、千葉県の漁船と静岡県の漁船により再捕され、ご報告をいただきました。また、他県でも同様な標識放流が行われており、大島付近の漁場で東京都の漁船により、2尾が再捕されています(表1)。
 過去の報告では標識放流後、十数年のちに再捕されたこともあり、今後の再捕が期待されます。
 水産試験場では、キンメダイのほか、タカベ、イサキでも標識放流を行っています。標識のついた魚を再捕しましたら、必ず水産試験場までご一報くださるよう、お願い申し上げます。
(調査指導船「みやこ」、資源生態科)


表1 標識キンメダイ再捕記録

表1 標識キンメダイ再捕記録


写真2 「みやこ」夜間操業風景

写真2 三宅島周辺で夜間操業中の漁船群

写真2 「みやこ」夜間操業風景(左)、三宅島周辺で夜間操業中の漁船群(右)


2.「伊豆・小笠原諸島の魚たち」の発刊

 大島分場では、このたび伊豆・小笠原諸島産魚類の地方名・標準和名対照集とカラー写真集からなる「伊豆・小笠原諸島の魚たち」を発刊することになりました。
 日本周辺の川や海には、約3800種の魚が棲んでいますが、伊豆・小笠原諸島にはこのうち1500種ほどがいるものと思われます。本書には漁業対象種を中心に、このうちの289極について伊豆・小笠原諸島における地方名802個が収録されています。対照集は、地方名と標準和名それぞれから魚名を五十音順に検索できます。また、大島分場に保存されているカラー写真218種も併載して、漁業者の皆さんはもちろん、市場関係者や学校などの現場で使えるよう配慮してあります。まだ、カラー写真の数が少ないなど、不十分な点もありますが、今後さらに充実をはかっていきますので、気軽に活用していただければ幸いです。


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