大島事業所では、ケンサキイカ(赤いか)の新たな出荷方法を開発しました。その結果、「従来の方法で出荷したケンサキイカと比較して肉の透明感や歯応えが良い」との評価が得られました。

 

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伊豆諸島では「赤いか」

 ケンサキイカは、伊豆諸島海域では春から夏にかけて夜間一本釣りや定置網で漁獲されるほか、桟橋や磯からも釣られます。漁獲量は年によって大きく変動しますが、多い年では伊豆諸島全体で100トン以上が漁獲されています。漁獲後、空気中にさらされると体色が徐々に鮮やかな赤色を呈することから、伊豆諸島では「赤いか」という通称で呼ばれ、甘みのある肉質は内地の市場でも定評があります。

ケンサキイカの出荷方法の現状は

 獲れたてのケンサキイカの外観は、透明感があって内蔵が透けて見えるほどで(写真1)、食べるとコリコリとした歯応えがあります。このような高鮮度なケンサキイカを消費者に届けるためには生かした状態で出荷するのが最も良い方法です。
しかし、ケンサキイカは生かして輸送することが難しいため、出荷する際には、砕氷を敷き詰めた発泡スチロール箱内にイカを並べる、「下氷」と呼ばれる方法(写真2)が一般的に用いられています。

  水揚げ直後のケンサキイカ   写真2 従来の出荷方法

写真1 水揚げ直後のケンサキイカ          写真2  従来の出荷方法

新たな出荷方法の開発

一方、最近の研究報告によれば、スルメイカの鮮度保持には、神経締め※や体表に十分な酸素を供給する事が重要であることが明らかになっています。そこで、神経締めしたケンサキイカを、酸素ガスと冷海水を充填したビニール袋に収容して出荷する方法(写真3、4)を試みました。その結果、肉の透明感が長く維持されることが明らかになりました(写真5)。

※ 神経の切断、破壊による活け締め方法

  写真3 神経締め風景   写真4 新たな出荷方法

   写真3 神経締め風景                   写真4 新たな出荷方法

 

  写真5 48時間保管したケンサキイカの外観    48時間保管したケンサキイカの外観

                写真5 48時間保管したケンサキイカの外観

           左:従来の出荷方法          右:今回開発した出荷方法

料理店での品評結果は

6月に大島と都内の料理店に品評していただきました。その結果、どちらの店の板前さんからも、従来の方法で出荷されたものと比較して透明感があり、歯ごたえも良いとの評価をいただきました。試食した来店客の評判も良く、8割の方が従来の出荷方法のケンサキイカより好ましいとの感想でした。
今後は、漁業関係者等のご意見も伺い、問題点の抽出改善を図りながら実用化へつなげたいと考えています。