~深海から珍しいイカが相次いで見つかる~

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   昨今、空前の深海生物ブームと言われていますが、平成29年末に三宅島と神津島周辺の底魚一本釣りで、深海から珍しいイカが相次いで採捕されましたので報告します。

 ワルビスイカの仲間

 三宅島漁業協同組合所属「大洋丸」から「平成291122日に、三宅島間鼻沖漁場の水深500mで今まで見たことのないイカを釣りあげた」と大島事業所に連絡があり、後日詳しく調べました。外套長8.8cm、体重50g、全長22.2cm、触腕掌部に長い鉤をもち、鰭は丸く幅がとても広く、外見からは発光器は見当たりません(写真1)。これらの特徴から、ツメイカ科のワルビスイカの仲間(Walvisteuthis属の一種)とみられます。Walvisteuthis属は、世界で4種が知られ、今回のイカがどの種類にあたるのかは、さらに詳しい調査が必要となります。

   写真1 ワルビスイカの仲間と触腕の鉤(右)

写真1. ワルビスイカの仲間と触腕の鉤(右)

ユウレイイカの仲間 

  神津島漁業協同組合所属「㐂三郎丸」から「平成29年12月23日に、神津島多幸沖漁場の水深420mで脚の長いイカを釣りあげた」とのことで、現物が大島事業所に持ち込まれました。

外套長6.1cm、体重7.4g、全長100.7cm、細くて長い触腕、丸い鰭を持ち、眼の腹側、触腕、第Ⅳ腕、外套腔内腹側に発光器を備え、外套腔内の発光器は一対の三日月型で特徴的でした(写真2)。これら特徴から、ユウレイイカ科のソマリアユウレイイカChiroteuthis spoeliと考えられますが、こちらも詳しい調査が必要となります。

写真2. ユウレイイカの仲間と外套腔内発光器(左上)

写真2. ユウレイイカの仲間と外套腔内発光器(左上)

日本初記録 深海性のイカ類

 詳しく調べる必要がありますが、今回、採捕された深海性のイカは両種ともに成体サイズでは、日本近海では初記録と思われます。ともに深海性のイカですが、ワルビスイカの仲間は大きな鰭で泳ぎまわり触腕の鉤で餌をとる種で、一方、ユウレイイカの仲間は、アンモニアを蓄えた体で漂い、発光器で身を隠して、長い触腕で餌をとるという、異なる生活を送っていることが知られています。深海性のイカに関する知見は、とても少ないため、見慣れないイカを見つけた際は、お手数ですが、ご連絡お願いします。

 

参考:新編世界イカ類図鑑 奥谷喬司著 東海大学出版会

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