平成20年11月11日 東京都島しょ農林水産総合センター大島事業所発行

                           大島事業所トピックNo.328 [264KB pdfファイル] 

テングサ藻場再生・保全対策の最前線(三宅島編) 

  三宅島では、平成17~19年度実施した第1期事業で、泥流等が海中に流入し、堆積した火山灰等の影響によりマクサ漁場の回復が遅れていることを確認しています。そこで、第2期事業では、マクサ漁場再生のための技術開発・検証と改良に取り組んでいます。本トピックでは、これまで得られた成果の概要を報告します。

「テングサの島・三宅島」は、今

 三宅島は、かつて「テングサの島」と言われるほど、沿岸に豊かなテングサ漁場が広がっていました。しかし、2000年に始まった雄山の大規模な噴火の影響で多くのテングサ漁場が荒廃し、噴火から8年経過した現在、浅場のオオブサ漁場は回復傾向にあるものの、深場に分布するマクサ漁場の多くは、回復が遅れています。回復の遅れの要因は、泥流等により陸上から海底や岩上に流入・堆積した火山灰や土砂がテングサの生育を阻害しているものと推察されています。

噴火後のオオブサ漁場

写真1 噴火後のオオブサ漁場

マクサ漁場

写真2  噴火後のマクサ漁場

マクサ漁場再生の切り札「海藻礁」

 三宅島のマクサ漁場の再生には、火山灰などの堆積物対策が不可欠です。そこで、火山灰や土砂の堆積しにくい基盤による再生対策を考えました。コンクリートの平板に柱状のブロックを取り付けて、垂直面を多くして堆積対策にしました。さらに、テングサが、ち切れた枝等からも繁殖する特性を活かし、海中に浮遊している切れ枝を付着・蝟集するための化学繊維を柱状ブロックの先端に取り付けました(写真3)。

写真3 海底に設置した海藻礁

写真3 海底に設置した海藻礁(2006.12.1)

 

試験礁で「海藻礁」の効果確認

 2006年11月に三宅島坪田沖の水深10mの海底に「海藻礁」の試験礁を設置し、約2年経過した2008年10月29日に追跡調査を行いました。
 「海藻礁」には多くのマクサが繁茂し、対象ブロックや周辺の天然岩礁に比較しても単位面積当たりの着生量は多く、さらに繁茂した全海藻中に占めるマクサの割合も高いことがわかりました。今後、「海藻礁」の更なる改良や技術確立を図り、事業化に繋げていきたいと考えています。

写真4 天草が繁茂した海藻礁

写真4 テングサが繁茂した海藻礁(2008.10.29)

「柱状ブロックの側面に繁茂したマクサ」