大島事業所トピックNo.388 タカベの成長と水温と黒潮大蛇行

大島事業所トピックNo.388 タカベの成長と水温と黒潮大蛇行

タカベの成長と水温と黒潮大蛇行

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タカベは伊豆諸島の重要な魚の一つで、夏に脂がのり、最盛期をむかえます。10年前には120tの漁獲量がありましたが、操業する人が減っていることもあり、昨年は47tと半分以下まで減少しています。島の漁業の現場では自主的な資源管理が行われており、大島事業所では、その一助として成長などの生態情報の収集を続けています。

タカベの成長

春に小型魚が大島~八丈島周辺の浅瀬に現れます。生息に適した水温は17~25℃です。各島で成長に差があり、大島<新島<三宅島<神津島の順に良いとされる一方で、八丈島では夏になっても小型魚ばかりが見られるのが特徴です。

このように島間で成長に差がある要因として水温が考えられます。水温の平年値は大島<新島<神津島<三宅島の順で、概ね成長の勾配と類似します。ただし、暖水黒潮の流路によっても変化します。八丈島は生息域の最も南にあたり、夏の水温が高すぎて、逆に成長しづらいのかもしれません。

左:新島産
右:八丈島産

写真 タカベ(左:新島産、右:八丈島産)

近年の水温/タカベ測定速報

黒潮大蛇行と呼ばれる現象が2017年8月末に始まり、2年たった現在も続いています。大蛇行は、紀伊半島から東海沖で黒潮が大きく南まで蛇行する流路が長期間継続する現象で、伊豆諸島北部では黒潮が接近することもあり(図1)、水温が上昇します。2018年の大島の水温は神津島の平年値に近く、神津島の水温は八丈島の水温に近くなっていました(図2)。2019年になっても同様の傾向が続いています。

6月から、各島のタカベの調査が始まっています。大島では例年より水温が高いせいか、大型のものが目立っています。黒潮大蛇行は長期化する兆候をみせており、今後も水温は高めで推移することが予想されます。数年間にわたって継続した場合、各島のタカベの成長への影響がはっきり表れてくる可能性があります。

図1 黒潮流路のパターンと伊豆諸島北部

図1 黒潮流路のパターンと伊豆諸島北部
左:2017年1月1日 非大蛇行型
右:2019年7月24日 大蛇行型

図2 各島の水温(2018年と平均値)

図2 各島の水温(2018年と平均値)

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